虫歯治療について
虫歯は、口内の細菌によって発生する感染症の一種です。しかし、単に細菌が存在するだけでは虫歯にはなりません。食習慣、歯の質、唾液の状態など、多様な要素が絡み合って発症します。
虫歯を除去することも重要ですが、将来的に虫歯を防ぐための予防措置を講じることが最も重要です。
では、「虫歯を除去する」とは具体的にどういうことでしょうか?これは、虫歯に侵された部分を削り取ることを意味します。虫歯治療では、患部を削り除く必要があります。これは基本中の基本ですが、再認識していただきたいことです。
削り取られた歯は元には戻りません。そして、虫歯が治療されたとしても、それは完全な回復ではなく、あくまで修復に過ぎないのです。虫歯の部分を取り除き、欠損した部分を補修して歯の形を元に戻し使用可能にするだけで、未だ虫歯になっていない歯に比べると強度が落ちてしまいます。
強度が落ちた歯は、再び虫歯になりやすいこと、また歯が薄くなるため、割れやすくなるリスクがあることを意味します。
従って、虫歯を除去すること以上に、将来的に虫歯を防ぐための予防策をしっかり行うことが最優先されるべきです。
レントゲン撮影による虫歯診断
虫歯治療で感じる痛みはどこから来るのでしょうか?
実は、歯の最外層を構成するエナメル質は、その硬さが水晶に匹敵します。
歯の構造について理解することで、治療時の痛みの原理が明確になります。歯の外側を覆うエナメル質は、削られても痛みをほとんど感じません。
しかし、エナメル質の内側にある柔らかい象牙質は異なり、無数の微細な管(象牙細管)が神経へと続いています。
内部に位置する神経は、象牙質を介して痛みや温度の変化などの刺激を感じ取ります。
虫歯がこの象牙質や更に深い神経層に達してしまうと、削る際に痛みが発生します。
根管治療では、神経を除去後に進められるため、基本的に痛みは感じませんが、例外もあります。
歯を支える歯根膜が敏感な方や、歯根の先端に亀裂がある場合は、根管治療中にも痛みを感じやすいのです。
- 視覚的検査(色変化、穴の有無など)
- レントゲンによる検査
- 虫歯検出用染色液の使用
- 染色液による検出
歯に穴が開いている場合は明らかに虫歯が存在することが認識できますが、歯と歯の間や内部に広がる虫歯は、外から見ただけでは判断が難しい場合があります。このような場合にレントゲン撮影が非常に有効です。
虫歯検出用染色液
虫歯が確認されたら、虫歯菌に侵された部分を削り取る作業が始まります。感染の範囲を正確に把握するために虫歯検出用染色液を用います。この染色液は、感染部分だけを特定の色で染めるよう設計されています。
染色液を使用して、感染した部分のみを精密に取り除くことが重要です。
この処置には時間がかかることがありますが、念入りに行うことで歯の寿命を延ばすことにつながります。そのため、治療においては手を抜くことはできません。
虫歯検出液が示す歯の状態
虫歯菌が歯の内部、神経にまで達している場合、痛みがなくても、神経を取り除く治療が必要です。神経に菌が侵入している状態で放置すると、将来的に痛みや腫れを引き起こすリスクがあります。
さらに、歯を削る処置は歯にとって大きな負担となり、治療後に歯が過敏になり、痛みを感じやすくなることがあります。この過敏症状は多くの場合、時間と共に改善しますが、痛みが持続する場合もあり、そうした時は神経の除去が適切な処置となります。
歯の深部まで虫歯が進行した場合
虫歯菌が歯の深部、根元にまで広がっている状況では、歯の抜歯を避けられないことがあります。
完全に感染した部分を除去すると、その歯を土台として使うことができなくなり、補綴物(かぶせ物や土台)を支える基盤が失われてしまいます。感染部分を残した状態で補綴物を施すと、不安定な基礎の上に建物を建てるようなもので、すぐに問題が発生します。
健康な食生活を送るためには、機能しなくなった歯を抜歯し、その部分を人工歯で補うことが望ましいです。
要するに、虫歯治療では、感染した部位を細かく丁寧に除去すること、そして、治療後に歯が痛みなく機能するように回復させることが重要です。
虫歯の進行度に応じた治療法
虫歯は発展する過程で異なる段階を経ますが、それぞれの段階に適した治療法があります。
C0段階:虫歯予防
この初期段階では、歯の表面が曇って見えたり、わずかに茶色く変色しています。C0の状態では、念入りな歯磨きによる自然回復が期待できます。
C1段階:虫歯治療
歯の表面に部分的な凹みが生じ、茶色く変色して見える段階です。この段階ではまだ痛みはありませんが、自然治癒は望めず、虫歯部分を軽く削り取り、歯の色に合わせたレジン(合成樹脂)や金属で充填します。
C2段階:虫歯治療
虫歯がエナメル質を超え、内部の象牙質に達している状態です。甘いものや冷たいものでしみる、ひどい時には痛みがあるなどの症状が現れます。虫歯を除去し、必要に応じて歯髄を保護するための薬剤を充填する処理を行います。
C3段階:虫歯治療
虫歯が歯の中心部、神経と血管が集まる場所まで進行し、激しい痛みが生じる段階です。この状態では、感染した神経を除去する治療が必要です。
C4段階:虫歯治療
神経が死んでしまい、痛みを感じなくなっている状態です。このまま放置すると、最悪の場合、歯を抜く必要が出てきます。
虫歯治療の特徴
1.精密な検査と治療実施
広尾麻布歯科では、虫歯治療に高度な精密機器を活用しています。歯科専用の顕微鏡やマイクロスコープ、そして拡大鏡を駆使して、歯の微細な箇所まで入念に検査し、治療を行います。患部を見落とすことなく、精度の高い治療を提供することにこだわっています。これが当院の虫歯治療における重要な特徴です。
2.治療後のフォローアップ
広尾麻布歯科では、治療完了後も定期的な歯科検診やクリーニングを推奨しています。定期検診により、治療した歯の状態を長期にわたってチェックし、再発や別の問題が生じないように管理しています。
3.自然な見た目のコンポジットレジン使用
虫歯治療において、削った部分の詰め物には自然な色味のコンポジットレジンを用いています。これは保険適応の範囲内で提供され、従来の金属製の詰め物と異なり、見た目が自然なため、歯の美しさを損ないません。
可能な限り痛みを抑えた治療への取り組み
痛みを可能な限り抑えた治療
広尾麻布歯科では、患者さんの痛みを極力軽減する治療法を追求しています。痛みを和らげるための麻酔使用に際して、特別な配慮を行っています。歯肉にはまず表面麻酔のジェルを塗布し、続いて痛みを感じにくい電動麻酔器を用いて麻酔注射を施します。麻酔が効き始めるまでの時間を利用して、痛みを伴わない治療から開始します。この方法により、歯や歯肉の表面だけでなく、より深い部分の痛みにも対応できます。
電動麻酔による痛みの軽減
電動麻酔器を使用することで、麻酔注射時の痛みを著しく軽減します。麻酔液を体温に近い温度に加温し、体内への注入時の違和感を低減させています。さらに、患者さんの呼吸リズムに合わせて麻酔をゆっくりと注入することで、注射による痛みを感じることなく施術が可能です。麻酔注入の速度を調整することで、従来の方法に比べて痛みを感じにくい麻酔が実現しています。
麻酔針の選択に対するこだわり
広尾麻布歯科では、麻酔注射に用いる針として33ゲージの細い針を選んでいます。この針の直径はわずか0.26mmで、蚊の刺す感触と比較しても遜色ないほど細いことで知られています。細い針を使用することで、患者さんが針を刺される際の感触をほとんど感じないよう工夫しています。ただ、細い針を使用すると麻酔液の注入が難しくなる傾向にあるため、ゆっくりと丁寧に麻酔を行うことで、この問題に対処しています。
歯科治療における痛みへの不安を払拭し、患者さんが治療に対して抵抗感を持たないよう、痛みを可能な限りに抑えた治療の提供に努めています。これにより、快適な治療体験を実現することを目指しています。
歯の神経の虫歯治療(歯内治療)
麻酔針の選択に対するこだわり
虫歯が進行し、細菌が歯の内部、特に神経組織へと侵入すると、症状は急速に悪化します。歯の神経組織は比較的柔らかく、細菌にとっては理想的な栄養源となり得ます。
歯の神経は、以下のような症状を通じて細菌の侵入を示します。
- 冷たいものや温かいものに敏感になる
- 痛みが継続して発生する
痛みがあるからといって必ず神経を取る必要があるわけではありませんが、痛みが激しい場合は、細菌が神経にまで達している可能性が高く、多くの場合、神経の除去が必要になります。
2.治療後のフォローアップ
- 神経を取り除く治療(抜髄治療)
- 細菌が神経内に侵入した場合の治療(感染根管治療)
これらの治療は手順が似ていますが、「神経を取り除く治療(抜髄治療)」に比べ、「細菌が神経内に侵入した場合の治療(感染根管治療)」は技術的に難しく、成功の見込みも低くなる傾向があります。
歯内の構造は非常に複雑で、内部の清掃と感染源の除去は困難な作業です。特に、細菌が侵入して感染している場合、治療は一層複雑になります。
治療成功率について
「神経除去治療(抜髄治療)」では約90%の成功率があり、「神経内感染治療(感染根管治療)」では約60%の成功率が報告されています。
これらの数値は科学的研究によっても確認されています。
具体的な歯内治療の流れについて
- まず、虫歯を徹底的に除去します。
- 次に、歯の内部の神経と侵入した細菌を取り除き、消毒を行います。
- 最後に、神経があった箇所に治療薬を充填します。
治療回数は、個人の状態や感染の深さ、治療箇所によって異なりますが、
神経除去治療では2回以上、神経内感染治療では3回以上の治療が必要となることが一般的です。
神経を除去することのデメリット
- 細菌の侵入を警告する機能が失われる。
- 歯が折れやすくなる(生きている木が折れにくいのに対し、枯れた木は折れやすいのと同様)。
- 歯が変色する可能性がある。
神経を取り除いた後の歯の修復とその後のケアでは、これらの問題を可能な限り抑える治療方法を採用することが重要です。
根管治療(歯内療法)の拘り
根管治療を行う際、広尾麻布歯科は治療の再発や再治療を極力避けることを目標としています。この治療には、高度な技術と精密な機器が必要とされますが、当院ではこれらの条件を満たす専門の歯科医師が担当し、再発や再治療のリスクを可能な限り抑えています。歯の神経や根の部分への治療は、患者さんの全体的な口内健康に影響を及ぼすため、当院ではこれらの影響を軽減し、治療の成功率を高めるための工夫を凝らしています。
根管治療の先進技術と材料
例として挙げられるのが、以下の技術と材料です。
ラバーダムによる防湿処置
歯にゴム製のシートを被せることで唾液の根内への侵入を阻止し、治療を無菌状態で行うことが可能になります。
CT(コンピュータ断層撮影)
歯や骨の構造を3Dで詳細に把握することができ、根の形状や感染範囲を正確に診断できます。
歯科用マイクロスコープ
細い根管やその先端部までを明瞭に視認し、従来目に見えなかった部位への精密な治療を実現します。
ニッケルチタン製ファイル
保険適用のステンレス製ファイルと異なり、曲がりやすい根管内部の清掃に適したニッケルチタン製のファイルを使用し、治療回数の削減を目指します。
MTAセメント
根管充填時に使用する材料で、保険診療で一般的な材料と比べて刺激が少なく、根の周りの骨の再生を促す効果があります。
加えて、治療中の痛みを可能な限り抑えるための浸潤麻酔技術や、EDTAという特別な消毒液を使用することで、安全かつ衛生的な根管治療を提供しています。これらの進歩した技術と材料の使用により、広尾麻布歯科は根管治療の質を高め、患者さんの快適性と治療成果を最大化できるよう努めています。
歯を抜く虫歯治療について
虫歯や歯周病が進行し治療が困難な段階に達した場合、歯の抜歯が避けられません。また、放置すると周囲の歯に悪影響を及ぼし、歯列の移動を引き起こすことがあります。矯正治療においても、利用できない歯は抜歯する必要が生じます。
無理に歯を残すと、隣接する歯に悪影響を及ぼし、咀嚼機能に問題が生じることがあります。可能な限り歯を保存する治療を心がけていますが、回復の見込みがない場合は抜歯が適切な選択となります。
抜歯と聞くと、痛みを懸念される方も多いですが、麻酔を行うため、ほとんどの場合、痛みを感じることなく治療を受けることが可能です。抜歯後の痛みについても、適切な痛み止めの処方で管理することができます。
ただし、痛みや腫れが既にある状態で抜歯を行う場合、麻酔の効果が十分でない場合があります。そのため、状態が悪化する前に適切なタイミングで治療を受けることが重要です。
抜歯後は、抜けた部分に対して必要に応じた処置を行い、将来的な治療の成功を目指します。
歯が欠けた際の虫歯治療
虫歯により部分的に損傷した歯を修復し、機能性を回復させる治療について説明します。虫歯の進行により歯が侵された場合、感染した部分を除去することで歯は薄くなり、見た目の美しさや咀嚼機能が損なわれます。この状態を改善し、歯の形状を元に戻すための治療が歯冠修復治療です。
歯冠修復治療には、以下の3つの主な方法があります。
- 直接的なプラスチック詰め物による修復:損傷した部分を直接的にプラスチック材料で充填し修復します(CR充填)。
- 型取りによる詰め物による修復:損傷部分の型を取り、それに基づいて製作された詰め物(インレー、オンレー)を使用して修復します。
- 型取りによるかぶせ物による修復:より大きな損傷に対しては、型を取り製作されたかぶせ物(クラウン)で修復します。
また、歯の神経を取り除いた後には、その部分を支える土台(コア)が必要となることがあります。虫歯の規模に応じて、上記の治療方法を選択し、損傷の程度が小さい場合は簡単な充填から、大きな損傷ではより複雑な処置が必要になります。それぞれの方法について、詳細を以下で解説します。
レジン充填による直接的な歯の修復
前歯の小さな虫歯に遭遇した場合、虫歯部分を除去した後に直接プラスチック製の詰め物で修復することが可能です。この治療は、できる限り歯を削る量を抑え、自然に近い歯の色で修復できる点が特徴です。小規模な虫歯の治療に適している場合が多く、保険診療で対応できる場合もあります。
ただし、大きな虫歯や奥歯の間に発生した虫歯には、この方法は適していません。その理由は、レジン充填の大きな欠点が強度の低さにあるためです。この方法で大規模に修復した場合、詰め物が割れたり、凹んだりするリスクがあります。したがって、噛む力が強く作用する部分への使用は適していません。
また、経年による変色や膨張の問題も存在します。初期は美しい仕上がりですが、時間が経つにつれて色や形が変化することがあります。変色や形状の変化が気になり始めたら、再治療のサインと考えて良いでしょう。
しかし、最近の技術革新により、セラミック成分を混合したプラスチック詰め物、いわゆるハイブリッドレジンが登場しました。これは、奥歯の間など比較的大きな虫歯にも対応可能な強度と変色しにくい特性を兼ね備えています。
大きな穴が開いた場合、従来は保険診療では銀色の詰め物が必要でしたが、ハイブリッドレジンならばその強度により修復が可能です。ただし、このハイブリッドレジンは自費治療に該当し、全ての症例で適用可能とは限りませんので、具体的な治療可能性についてはカウンセリング時にご確認ください。
虫歯予防の重要性
虫歯の初期段階では、しばしば自覚症状が乏しいため、多くの患者さんが症状が進行してから歯科医院を訪れます。このため、虫歯を未然に防ぐ意識の強化と、早期発見を可能にする定期的な歯科チェックアップが非常に重要です。初期の虫歯であれば、削る範囲をできる限り歯を削る量を抑えることができ、時には適切なブラッシングや歯科衛生士によるクリーニングだけで改善することも可能です。これにより、患者さんの治療に伴う負担を軽減できます。
自身の歯を虫歯やその他の疾患から守るためには、日々のセルフケアだけでなく、定期的に歯科医院での検診を受け、歯科医師や歯科衛生士による専門的なクリーニングや予防治療の機会を持つことが欠かせません。