神経を抜いた歯(失活歯)の黒ずみ、諦める前に知るべき3つの治療法 - 広尾麻布歯科
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コラム

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2025.09.10

神経を抜いた歯(失活歯)の黒ずみ、諦める前に知るべき3つの治療法



目次

鏡を見るたび気になる、一本だけ黒ずんだ歯。その悩み、諦めていませんか?



笑うと目立つ前歯の変色、つい口元を隠してしまう

周りの歯は白いのに、一本だけ色が違う。特に人目につきやすい前歯が黒ずんでいると、鏡を見るたびに気持ちが沈んでしまうものです。
友人との会話中や写真撮影の際、無意識に手で口元を隠してしまったり、思いっきり笑うことをためらってしまったり…。そうしたご経験をお持ちの方は、決して少なくありません。
歯の色は、お顔の印象を大きく左右する要素の一つです。たった一本の歯の変色が、ご自身の笑顔への自信を失わせ、コミュニケーションにまで影響を及ぼしてしまうことがあるのです。そのお悩み、そして「もっと自然な見た目にしたい」というお気持ちを、私たちは深く理解しています。


「神経を抜いたから仕方ない」と、昔言われたけれど…

過去に歯科医院で神経を抜く治療(根管治療)を受けた際、「治療した歯はだんだん黒ずんでくるけれど、これは仕方がないこと」と説明されたご経験があるかもしれません。
確かに、一昔前の歯科医療では、神経を失った歯、いわゆる「失活歯(しっかつし)」の変色に対する有効な治療法は限られていました。そのため、多くの患者様が「神経を抜いた歯の変色は諦めるしかない」とお考えになってきたのも事実です。
しかし、歯科医療は日々進歩しています。特に歯の審美性を回復させる分野の技術や材料はここ十数年で目覚ましく発展しました。かつての「常識」は、今や過去のものとなっているケースも少なくないのです。


その黒ずみ、現代の歯科治療で改善できる可能性があります

もしあなたが「この歯の色はもう変わらない」と諦めているのであれば、ぜひこの記事を読み進めてみてください。現代の歯科医療には、神経を抜いた失活歯の黒ずみを改善するための、いくつかの有効な治療法が存在します。歯をほとんど削らずに内側から白くする方法、歯の表面を薄いセラミックで覆って色と形を整える方法、歯全体を被せ物で補強しながら美しく見せる方法など、その選択肢は一つではありません。
あなたの歯の状態やご希望、ライフスタイルに合わせて、最適な解決策を見つけることが可能です。まずは正しい情報を知ることから、あなたの笑顔を取り戻すための第一歩を踏み出してみませんか。





まずは知ることから。そもそも「失活歯(神経を抜いた歯)」とは?



歯の「神経(歯髄)」が担っている大切な役割

一般的に「歯の神経」と呼ばれているのは、歯の内部にある「歯髄(しずい)」という組織のことです。歯髄は、神経線維だけでなく、血管やリンパ管などが集まった非常に重要な組織で、大きく3つの役割を担っています。
一つ目は、冷たいものや熱いものなどの刺激を脳に伝え、虫歯などの異常を知らせる「感覚機能」。
二つ目は、血管を通して歯の硬組織(象牙質)に栄養や水分を供給する「栄養補給機能」です。この働きにより、歯は強度としなやかさを保っています。
三つ目は、外部からの刺激に対して、象牙質を新たに作り防御する「防御機能」です。
このように、歯髄は歯の健康と寿命を支える生命線とも言える存在です。この歯髄を失った歯が「失活歯」であり、生命力を失った木がもろくなるのと同様の状態と言えます。


なぜ歯は「失活」してしまうのか?原因は虫歯だけではない

歯が「失活」する、つまり歯髄を失う最も一般的な原因は、歯の内部まで進行した重度の虫歯です。虫歯菌が歯髄にまで達すると、激しい痛みを伴う歯髄炎を引き起こし、放置すると歯髄は壊死してしまいます。
しかし、原因は虫歯だけではありません。例えば、スポーツや転倒などで歯を強くぶつけた場合、歯の根の先で血管が断裂し、歯髄への栄養供給が途絶えて壊死することがあります。この場合、痛みを感じないまま、数カ月〜数年かけてゆっくりと歯が変色していくことも少なくありません。
また、歯に入った亀裂(ひび)から細菌が侵入したり、重度の歯周病が根の先から歯髄に感染したりすることもあります。様々な原因によって歯は生命力を失い、失活歯となってしまうのです。


神経を抜く(根管治療)とは、どのような処置なのか

「神経を抜く」と聞くと、何か怖い処置をイメージされるかもしれませんが、これは正式には「根管治療」と呼ばれる、歯を保存するために不可欠な治療法です。歯髄が炎症や感染を起こしてしまった場合、放置すれば細菌が歯の根の先にまで広がり、周囲の骨を溶かしたり、激しい痛みを引き起こしたりします。
根管治療は、そうした事態を防ぎ、抜歯から歯を守るための処置です。具体的には、まず感染・壊死した歯髄を専用の器具で丁寧に取り除きます。次に、歯の根の中(根管)を隅々まで洗浄・消毒し、細菌が存在しない無菌的な状態にします。
最後に、根管内に再び細菌が侵入しないよう、隙間なく薬剤を詰めて密封します。この一連の処置により、歯そのものは残すことができますが、歯髄を失った「失活歯」となり、時間と共に変色や強度低下といった問題が生じやすくなります。





なぜ神経を抜いた歯は黒ずんでしまうのか?変色のメカニズム



歯に栄養が届かなくなる「象牙質の変性」

歯の神経(歯髄)は、歯に栄養や水分を供給する生命線です。歯髄を失った歯は水分やしなやかさを失うため、健全歯に比べて脆くなりやすい状態になります。栄養の供給が途絶えることで、歯の主成分である象牙質の有機成分(コラーゲンなど)が時間と共に変性し、歯そのものの透明感が失われていきます。
健康な歯は、光が象牙質を透過することで自然な白さや透明感を保っていますが、失活歯ではこの光の透過性が低下し、歯がくすんだり、灰色や黄色っぽく見えたりするようになるのです。
これは、歯の内部で起こる構造的な変化であり、表面を磨いたり、通常のホワイトニングを行ったりしても改善が難しい、失活歯特有の変色の根本的な原因です。この変化はゆっくりと進行するため、治療直後は気にならなくても、数年かけて徐々に色の違いが目立つようになります。


根管内の古い薬剤や血液が原因となるケース

象牙質の変性に加え、歯の内部に残存する物質が変色の原因となることもあります。例えば、歯をぶつけた衝撃で歯髄が壊死した場合、内出血を起こして血液の成分が象牙質の微細な管に入り込むことがあります。血液中のヘモグロビンが分解される過程で生じる鉄分などが、歯を黒っぽく変色させるのです。
これは、皮膚にできた痣(あざ)がなかなか消えないのと同じ原理です。また、根管治療の際に使用した薬剤が原因のこともあります。特に、ひと昔前の根管充填材には、時間と共に変色・腐食する成分が含まれているものがあり、それが歯を黒く染めてしまうケースが見られます。
根管治療の際に、歯髄組織の除去が不完全であった場合も、残った組織が変性して変色の原因となります。これらの要因が、失活歯の変色をさらに助長させてしまうのです。


時間の経過と共に変色が濃くなる理由

「神経を抜いてから年々、歯の色が濃くなっている気がする」と感じる方は少なくありませんが、それは気のせいではありません。失活歯の変色は、多くの場合、時間と共に進行します。
その理由は、これまで述べた要因が重なって作用するためです。歯髄を失ったことによる象牙質の変性は、ゆっくりと、しかし確実に進行し続けます。
歯の内部に残った血液成分や古い薬剤なども、時間をかけて歯の深部へと浸透し、より広範囲に色を広げていきます。さらに、歯の表面のエナメル質は元々多孔質であるため、コーヒーやお茶、タバコなどの外部からの着色物質(ステイン)も、この変色した象牙質に沈着しやすく、内部からの変色と外部からの着色が重なることで、黒ずみが一層際立って見えてしまうのです。
しかし、たとえ長年経過した変色であっても、適切な治療法を選択することで改善できる可能性は十分にあります。





失活歯の黒ずみを改善する2つの治療法



①歯をほとんど削らずに内側から白くする「ウォーキングブリーチ」

ウォーキングブリーチは、神経を抜いた失活歯の内部に直接、歯を白くする薬剤を入れて変色を改善する治療法です。歯の裏側に小さな穴を開け、そこから高濃度のホワイトニング剤を注入し、仮の蓋をします。薬剤を歯の中に入れたまま数週間過ごしていただくことで、内側から徐々に歯を白くしていきます(歩きながら(walking)歯を白くする、というのが名前の由来です)。この治療法の大きな利点は、歯をほとんど削ることなく、ご自身の歯の形をそのまま残せる点にあります。
ただし、根管治療が確実に行われていることが前提となり、色の後戻りが起こる可能性や、歯の強度自体は改善されないといった側面もあります。歯を削ることに抵抗がある方や、比較的軽度の変色の場合に検討される選択肢の一つです。


②歯全体を覆って補強もする「セラミッククラウン」

セラミッククラウンは、歯全体を削って形を整え、その上からセラミック製の被せ物(クラウン)をすっぽりと被せる治療法です。失活歯の黒ずみを完全に遮断し、天然歯と見分けがつかないほどの自然で美しい見た目を再現することができます。
そして、この治療法のもう一つの大きな利点は、歯の「補強」ができる点です。神経を失い、もろくなった失活歯は、将来的に破折するリスクを抱えています。クラウンで歯全体を覆うことで、噛む力から歯を守り、歯の寿命を延ばす効果が期待できます。
歯を削る量は他の治療法より多くなりますが、「審美性の回復」と「歯の保護」という二つの目的を同時に達成できる、適応が広く、審美性と補強性を両立できる治療法の一つです。特に奥歯や、既に詰め物が大きい失活歯に対しては、第一選択となることが多い治療法です。





ウォーキングブリーチ、クラウン。あなたに合う治療法は?



「歯を削る量」「色の後戻り」「費用」で比較する

失活歯の治療法を選択する上で、多くの患者様が気にされるのが「歯を削る量」「色の後戻り」「費用」の3点です。まず、歯を削る量は、ウォーキングブリーチが最も少なく、次いでセラミッククラウンの順に多くなります。ご自身の歯を最大限残したいという方には、ウォーキングブリーチが魅力的な選択肢です。
次に、色の後戻りについては、セラミックを用いるクラウンは、材質の特性上、変色や着色がほとんどなく、長期的に安定した色を保ちます。
一方、ウォーキングブリーチは、数年単位で徐々に色が戻ってくる可能性があります。費用面では、これらはいずれも多くの場合、健康保険が適用されない自由診療となります。
一般的には、ウォーキングブリーチが最も負担が少なく、次にセラミッククラウンが高くなる傾向があります。


あなたの歯の状態と、目指す白さのゴール

どの治療法が最適かは、患者様個々のお口の状態と、どのようなゴールを目指すかによって大きく異なります。例えば、変色以外に大きな問題がなく、歯の形も整っている失活歯であれば、歯を削らないウォーキングブリーチが良い適応となります。
一方、すでに大きな詰め物が入っている、あるいは歯の大部分が欠けているなど、歯の強度が著しく低下している失活歯の場合、見た目の改善と同時に歯を破折から守る「補強」という観点から、セラミッククラウンが最も推奨される治療法となります。ご自身の歯の状態を正確に診断し、どのような仕上がりを望むのかを歯科医師と共有することが、満足のいく結果への近道です。


各治療法のメリット・デメリット早わかり表

複雑に感じる3つの治療法ですが、それぞれの長所と短所を整理すると、選択しやすくなります。

【ウォーキングブリーチ】
・メリット:歯をほとんど削らない、比較的費用が安い。
・デメリット:色の後戻りの可能性がある、白さの調整が難しい、歯を補強できない。
 
【セラミッククラウン】
・メリット:変色を完全に遮断できるため、高い審美性を得られることが多い治療法。
・デメリット:歯を削る量が最も多い、費用が比較的高額になる。
 
このように、どの失活歯 治療法にも一長一短があります。ご自身の優先順位と照らし合わせながら、最適な方法を検討しましょう。





色だけの問題ではない。失活歯が抱える「破折」というもう一つのリスク



なぜ失活歯はもろく、割れやすいのか?

失活歯の見た目を気にする方は多いですが、それ以上に注意すべきが「歯がもろくなる」という事実です。その理由は主に3つあります。
第一に、歯髄からの栄養供給がなくなることによる「歯質の乾燥」です。水分を失った木が枯れてもろくなるように、歯も弾力性を失い、硬くてもろい状態になります。
第二に、「歯の構造的な弱化」です。そもそも神経を抜くに至った歯は、大きな虫歯などによって既に多くの歯質を失っています。さらに根管治療のために歯の中心部を削るため、歯は構造的に空洞となり、強度が大幅に低下します。
第三に、「感覚の喪失」です。歯髄には、噛んだ時の力を感知するセンサーの役割があります。このセンサーを失うことで、過剰な力がかかっても気づきにくく、無意識に強い力で噛んでしまい、歯にダメージを与えやすくなるのです。


歯の破折が引き起こす最悪の事態とは

もろくなった失活歯が、硬いものを噛んだ時などに「パキッ」と音を立てて割れてしまうことがあります。これが歯の破折です。破折の仕方によっては、部分的な修復が可能な場合もありますが、最も深刻なのは、歯の根まで縦にヒビが入ってしまう「歯根破折」です。
歯根破折が起きてしまうと、その亀裂から細菌が歯の内部や周囲の骨に侵入し、治癒の難しい慢性的な炎症を引き起こします。歯ぐきが繰り返し腫れたり、鈍い痛みが出たりといった症状を伴うこともあります。
そして、一度歯根破折を起こしてしまった歯は保存が難しいケースが多く、多くの場合は抜歯が必要になります。この場合の治療法は、多くの場合、抜歯(歯を抜くこと)という選択をせざるを得ません。歯を失うという最悪の事態を避けるためにも、失活歯の破折リスクを軽視してはならないのです。


見た目の改善と、歯の保護を両立させる治療の考え方

失活歯の治療を考える際、私たちは「見た目の改善(審美性)」と「歯の保護(機能性)」という二つの側面を常に両立させる必要があります。
例えば、歯を削らないウォーキングブリーチは審美性を改善できますが、歯を補強する効果はありません。これに対し、セラミッククラウンは、変色を完全にカバーして美しい見た目を実現すると同時に、歯全体を覆って箍(たが)のように締め付けることで、歯が割れるリスクを大幅に低減させます。
つまり、審美性と機能性の両方を高いレベルで満たすことができるのです。どの失活歯 治療法を選択するかは、単に色を白くしたいというご希望だけでなく、その歯がどれくらいの咬合力を負担するのか、残っている歯質はどの程度か、といった力学的な観点からの診断が不可欠です。





治療を始める前に。ご自身の希望と優先順位を整理しましょう



あなたが最も重視するのは「白さ」「歯の保存」「費用」?

失活歯の治療には複数の選択肢があり、それぞれに長所と短所が存在します。最適な治療法を選ぶためには、まずご自身が何を最も大切にしたいのか、優先順位を整理することが重要です。「とにかく自然で美しい白さを手に入れたい」という審美性を最優先するならば、セラミックを用いる治療法が有力な候補となるでしょう。
一方で、「費用は抑えつつ、できるだけ自分の歯を削りたくない」という歯の保存を重視するならば、ウォーキングブリーチが第一の選択肢になるかもしれません。
また、「見た目も大事だが、それ以上に歯が割れるのを防いで長く使えるようにしたい」という機能性や耐久性を優先するならば、補強効果の高いクラウンが合理的な選択肢となることが多いです。
このように、ご自身の価値観を明確にすることで、数ある治療法の中から、ご自身が心から納得できる選択をしやすくなります。


どこまでの治療を望むか、ゴールをイメージする

優先順位の整理とあわせて、「治療によって、どのような状態になりたいか」というゴールを具体的にイメージすることも大切です。
例えば、あなたのゴールは「他の歯と比べて明らかに黒いのが、少し目立たなくなる程度で十分」でしょうか。
それとも、「隣の歯と見分けがつかないくらい、色も形も自然で完璧な状態にしたい」でしょうか。
あるいは、「白くなるのはもちろん、今後、歯が割れる心配なく安心して食事ができるようになりたい」でしょうか。
このゴール設定によって、選ぶべき失活歯 治療法は大きく変わってきます。漠然と「歯を白くしたい」と考えるのではなく、ご自身の理想のゴールを具体的にイメージしておくことで、歯科医師とのコミュニケーションがよりスムーズになり、治療後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぐことができます。


カウンセリングで医師にしっかり伝えるための準備

ご自身の希望や優先順位が整理できたら、それをカウンセリングの場で歯科医師に的確に伝える準備をしましょう。緊張すると言いたいことを忘れてしまいがちですので、事前に簡単なメモを作成しておくことをお勧めします。メモには、①あなたが最も重視する点(例:1.歯の保存、2.費用…)、②治療のゴール(例:とにかく自然な見た目にしたい)、③疑問や不安に思う点(例:それぞれの治療法の耐久年数は?メンテナンス方法は?)などを書き出しておくと良いでしょう。
また、その失活歯をいつ頃、どのような経緯で治療したのか、といった情報も伝えていただけると、より正確な診断の助けになります。
このように事前に準備をして臨むことで、限られた時間の中で質の高い相談ができ、あなたが治療の主役となって、主体的に判断を下すための大きな力となります。





納得のいく治療を受けるための、歯科医院選びのポイント



審美歯科治療における「診査・診断」の重要性

失活歯の治療、特に審美性を追求する治療は、単に歯を白くするだけの作業ではありません。美しい仕上がりと、その美しさを長持ちさせるためには、治療前の精密な「診査・診断」が不可欠です。
信頼できる歯科医院では、まずレントゲン撮影を行い、過去に行われた根管治療が適切であるか、根の先に病気がないかなどを必ず確認します。
もし問題があれば、審美治療の前に根管の再治療が必要となります。また、歯周病検査で歯ぐきの健康状態をチェックし、口腔内写真や模型で歯の色や形、全体の噛み合わせを多角的に分析します。こうした丁寧な診査・診断は、安全で確実な失活歯 治療法を選択するための土台となります。
カウンセリングの際に、こうした検査の重要性をきちんと説明してくれるかどうかも、医院の質を見極める上での大切な指標です。


治療法の選択肢を複数提示してくれるか

失活歯の治療法には、この記事でご紹介したように複数の選択肢があります。あなたの歯の状態やご希望に対し、考えられる治療法の選択肢をいくつか提示し、それぞれのメリット・デメリット、費用や期間などを公平に説明してくれるかどうかは、信頼できる歯科医師を見分けるための非常に重要なポイントです。
例えば、「あなたの場合はこの治療法しかありません」と高額な治療のみを強く勧めるのではなく、「Aという方法にはこういう長所がありますが、Bという方法なら費用を抑えられます」といったように、患者様の価値観や優先順位を尊重した提案をしてくれるかどうかが問われます。
治療の主役はあくまで患者様ご自身です。専門家として最善の道筋を示しつつも、最終的な決定は患者様自身が納得して下せるよう、十分な情報提供と対話を尽くしてくれる歯科医院を選びましょう。


症例写真や治療後のメンテナンス体制も確認

治療を依頼する歯科医師の技術力や美的センスを判断する上で、過去の「症例写真」は客観的な参考資料となります。あなたと似たようなケース(例えば、前歯の失活歯一本の治療など)の写真を見せてもらい、その仕上がりが自然で、あなたの感性に合うかどうかを確認してみましょう。多くの症例を手がけ、その結果に自信を持っている歯科医師は、快く情報を提供してくれるはずです。
また、同様に重要なのが「治療後のメンテナンス体制」です。セラミック治療などは、適切なケアをすれば長期間にわたって安定しますが、そのためには定期的なプロのチェックが欠かせません。治療後の定期検診やクリーニングの重要性をきちんと説明し、長期的にあなたのお口の健康をサポートする体制が整っているかどうかも、医院選びの大切な確認事項です。





「失活歯の治療」に関する、よくある質問(FAQ)



Q. 治療は痛みますか?期間はどのくらいかかりますか?

A. 失活歯は神経がないため処置中の痛みはほとんどありませんが、歯ぐきや周囲の状態によっては麻酔が必要になる場合もあります。麻酔が必要となることは稀ですが、患者様が安心して治療を受けられるよう、万全の配慮をいたします。治療期間は、選択する治療法によって異なります。
ウォーキングブリーチは、薬剤の交換のために数週間にわたり2〜4回程度の通院が必要です。セラミッククラウンは、歯の形を整えて型取りをする日と、完成したものを装着する日の、主に2回程度の通院で完了しますが、歯科技工所での製作期間を含めると、全体の治療期間は数週間から1ヶ月程度が目安となります。
ただし、根の状態に問題があり、再治療が必要な場合は、さらに期間がかかることもあります。


Q. 保険は適用されますか?

A. 失活歯の見た目を改善するためにご紹介した、ウォーキングブリーチ、セラミックを用いたクラウン治療法は、審美性の回復を主目的とすることから、原則として健康保険の適用外となり、「自由診療(自費診療)」となります。
公的医療保険は、病気の治療や最低限の機能回復を目的としており、より自然で美しい見た目を追求する治療は、その範囲を超えるためです。
ただし、失活歯を補強するための土台(コア)の作製や、奥歯などで機能回復を主目的とする場合に金属のクラウン(いわゆる銀歯)を選択する際は、保険が適用されるケースもあります。費用に関する詳細は、カウンセリングの際にしっかりとご説明しますので、ご不明な点はお気軽にご質問ください。


Q. 治療で白くした歯の色は、ずっと維持できますか?

A. 治療後の色の持続性は、選択する治療法によって異なります。ウォーキングブリーチは、ご自身の歯を白くするため、食生活などによっては数年単位で徐々に色が後戻りする可能性があります。しかし、再度ブリーチを行うことで、白さを取り戻すことも可能です。
一方、セラミッククラウンに用いるセラミックという材料は、陶材であるため材質そのものが変色・着色することはほとんどありません。治療直後の美しい色合いを、非常に長期間にわたって維持することができます。
ただし、セラミック自体は変色しなくても、周囲のご自身の歯は加齢や食生活で変化します。また、被せ物と歯ぐきの境目に汚れが溜まると、そこが着色することもあるため、日々の丁寧なケアと定期的なプロのクリーニングが、美しい状態を保つ鍵となります。


Q. 昔治療した歯でも、やり直しは可能ですか?

A. はい、多くの場合、やり直しは可能です。「昔入れた差し歯の色が合わなくなってきた」「古い詰め物が変色している」といったお悩みに対しても、現代の失活歯 治療法で対応できるケースはたくさんあります。
治療のやり直しでは、まず古い修復物や詰め物を丁寧に取り除き、その下の歯や根の状態を精密に再診断します。時には、根管治療そのものをやり直す「感染根管治療」が必要となる場合もあります。歯の土台を補強し直し、最新のセラミック材料などを用いて作り直すことで、審美性と機能性を大幅に改善させることが期待できます。
ただし、歯の残っている量が極端に少ない場合や、歯の根が割れている(歯根破折)場合など、状態によってはやり直しが難しいこともあります。諦めてしまう前に、まずは一度、専門家にご相談ください。





まとめ:正しい知識で、自信の持てる笑顔を取り戻す



「仕方ない」という思い込みからの卒業

一本だけ黒ずんだ失活歯を前に、「神経を抜いたのだから仕方ない」と、長年諦めてこられた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この記事を通じ、その思い込みは過去のものであるとお分かりいただけたのではないでしょうか。現代の歯科医療には、あなたの悩みを解決するための、いくつもの有効な選択肢が存在します。諦めの気持ちは、多くの場合、情報が不足していることから生まれます。
大切なのは、まず正しい知識を得て、ご自身の歯に秘められた可能性を知ることです。古い常識や思い込みから卒業し、前向きな気持ちでご自身の歯と向き合うこと。それが、自信に満ちた笑顔を取り戻すための、何より重要な心の準備となります。


あなたの歯とライフスタイルに合った最善の選択

失活歯の治療法には、それぞれ異なる特徴があり、「誰にとってもこれが一番」という絶対的な正解はありません。あなたにとっての最善の選択は、ご自身の歯が今どのような状態にあるのかという「医学的な診断」と、あなたが何を優先し、どのようなゴールを目指しているのかという「ご自身の価値観」をすり合わせて初めて見つかります。
歯をなるべく削りたくないのか、完璧な美しさを求めるのか、将来的な歯の破折リスクを最も重視するのか。様々な失活歯 治療法の中から、あなたのライフスタイルや考え方に最も寄り添う選択をすることが、治療後の満足度を大きく左右します。
私たち専門家は、そのための正確な情報を提供し、あなたが最善の決断を下すためのお手伝いをします。


不安を希望に変える、専門家への相談という第一歩

鏡を見るたびに感じていたその不安は、具体的な行動を起こすことで、未来への希望へと変えることができます。そのために、今あなたができる最も確実で、そして最も大切な「第一歩」。それは、勇気を出して歯科医院に相談することです。インターネットで情報を集めるだけでは、あなたの個別の状況に合った答えは見つかりません。
専門家による診査・診断を受け、あなたの歯の正確な状態を知り、あなたのためだけの治療法の選択肢について、直接話を聞くこと。この一歩が、漠然とした不安を具体的な解決策へと導き、あなたの笑顔を輝かせるための、すべての始まりとなるのです。



監修:広尾麻布歯科
所在地〒:東京都渋谷区広尾5-13-6 1階
電話番号☎:03-5422-6868

*監修者
広尾麻布歯科
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
東京都式根島歯科診療所 勤務
長崎県澤本歯科医院 勤務
医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務

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