はじめに:なぜ歯の神経を抜きたくないのか?

・神経を抜くと歯の寿命が縮まる?
歯の神経(歯髄)は、単に痛みを感じるだけでなく、歯にとって非常に重要な役割を果たしています。神経を抜く(抜髄)ことで、歯に栄養や水分を供給する機能が失われ、結果的に歯がもろくなり、寿命が短くなってしまうのです。
歯の神経があることで、以下のようなメリットがあります。
- 歯に栄養を供給する:神経があることで歯に水分が供給され、しなやかさを保ちます。
- 外部刺激を感知できる:熱いもの・冷たいものに対する感覚があり、異常を早めに察知できます。
- 免疫機能を持つ:細菌が侵入した際に、炎症反応を起こし防御機能を果たします。
しかし、神経を抜くと歯は「枯れ木」のように脆くなり、割れやすくなります。そのため、できる限り神経を残す治療が推奨されます。
・神経を抜かずに済む可能性はあるのか?
神経を抜くしかないと言われた場合でも、適切な治療を行うことで神経を残せる可能性がある場合があります。
- 初期の虫歯であれば、歯髄温存療法(MTAセメントや覆髄治療)を行うことで神経を守れる。
- 深い虫歯でも、痛みが強くなければ、削る量を最小限に抑えた「なるべく削らない治療(MI治療)」が可能。
- レーザー治療や再石灰化療法を活用することで、神経を抜かずに治療できる場合もある。
ただし、炎症がひどく、すでに歯髄が壊死している場合は、神経を保存することが難しいため、早めの診断・治療が鍵となります。
・できるだけ歯を残すために知っておきたいこと
① 早期発見・早期治療を心がける
虫歯の進行は早いため、痛みがなくても定期的に歯科検診を受けることが大切です。
「しみる」「違和感がある」と感じたら、すぐに歯科医院へ。
② 予防を徹底する
フッ素配合の歯磨き粉を使用し、歯の再石灰化を促す。
正しい歯磨きとフロス・歯間ブラシを併用し、汚れを徹底的に除去する。
③ 最新の治療法を知る
近年では、「できるだけ削らない・抜かない」治療が進化しています。
自分の歯を守るために、神経温存治療を行っている歯科医院を選ぶことも重要です。
歯の神経を守るためには、早期の対応と適切な治療の選択が鍵となります。
「神経を抜くしかない」と言われたとしても、他の治療法がないかを確認し、納得のいく治療を受けることが大切です。
歯の神経を抜く必要があるケースとは?

・虫歯が神経に到達した場合
虫歯は進行すると、歯の表面のエナメル質を溶かし、その後、象牙質へと広がります。さらに進行すると、歯の中心にある神経(歯髄)に達し、強い痛みを伴うようになります。
虫歯の進行段階と神経への影響
虫歯の進行には以下の4つの段階があり、C3(歯髄まで達した虫歯)以上になると神経を抜く可能性が高くなります。
- C1(エナメル質の虫歯):痛みはなく、定期検診での発見が多い。フッ素塗布や小さな詰め物で治療可能。
- C2(象牙質の虫歯):冷たいものがしみる程度。詰め物や被せ物で対応できるが、早めの治療が必要。
- C3(歯髄に達した虫歯):ズキズキとした強い痛みが発生し、神経が炎症を起こしている。根管治療が必要になることが多い。
- C4(神経が壊死した虫歯):一時的に痛みが消えるが、歯の根に膿がたまり、再び激しい痛みが起こる可能性がある。抜歯が必要になることもある。
C3の段階では、歯髄が炎症を起こし(歯髄炎)、歯がズキズキと痛むようになります。この状態では、神経を抜く「根管治療」が必要になるケースが多くなります。しかし、ごく初期の炎症であれば、歯髄温存療法(MTAセメントや覆髄治療)によって神経を残せる可能性もあるため、早めの診断が重要です。
・外傷による神経の損傷
転倒や事故、スポーツ中の衝撃などで歯に強いダメージを受けると、神経が損傷し、痛みや変色を引き起こすことがあります。
1. 歯が折れたり欠けたりした場合
- エナメル質だけの損傷:削って滑らかにするか、コンポジットレジン(樹脂)で補修することで対応できる。
- 象牙質まで達した場合:象牙質が露出すると、刺激が神経に直接伝わり、しみるようになる。詰め物や被せ物で対応可能。
- 歯髄(神経)が露出した場合:強い痛みが生じ、歯髄の保存が難しいことが多い。根管治療が必要になるケースが多い。
特に、前歯をぶつけた場合、時間が経つにつれて歯が変色することがあります。これは、神経がダメージを受けて壊死し、内部で出血が起こるためです。変色が進行すると、根管治療が必要になります。
2. 強い衝撃で神経が死んでしまうこともある
- 事故やスポーツで強い衝撃を受けた場合、神経がダメージを受けた直後は痛みを感じなくても、時間が経ってから問題が発覚することがあります。
- 神経がダメージを受けた後、徐々に血流が途絶えて壊死するケースがある。
- 壊死した神経は細菌に感染しやすくなり、根尖性歯周炎(歯の根に膿がたまる状態)を引き起こす可能性がある。
- 早めに歯科医院でレントゲン検査を受け、神経の状態を確認することが重要。
このようなケースでは、神経を保存する治療が可能か慎重に判断し、必要であれば根管治療を行うことになります。
・重度の歯の感染や炎症
歯の内部で細菌感染が進行すると、神経を抜かざるを得ない状況になることがあります。
1. 根尖性歯周炎(歯の根に膿がたまる)
- 虫歯や外傷が原因で神経が死ぬと、歯の根の先に細菌が増殖し、膿がたまることがあります。
- 初期段階では無症状のこともあるが、進行すると歯ぐきが腫れたり、強い痛みが生じるようになります。
- 放置すると、顎の骨に炎症が広がり、さらに大きな問題を引き起こす可能性がある。
この状態では、根管治療で膿を取り除き、炎症を抑える必要があります。早期治療を行えば、神経を抜かずに済むこともありますが、感染が進行している場合は、神経を除去しなければならないケースも少なくありません。
2. 破折(歯の根が割れている場合)
- 歯の根が割れると、細菌が侵入しやすくなり、感染が進行しやすい。
- 縦に割れてしまった場合は、神経を抜くだけでなく、抜歯が必要になることが多い。
- 割れた部分が小さい場合は、接着治療や被せ物で対応できるケースもあるため、早期の診断が重要。
3. 矯正治療や過度な咬合圧による影響
- 矯正治療で歯を大きく動かした場合、歯の神経がダメージを受け、壊死することがある。
- 歯ぎしりや食いしばりによって、歯の内部の神経が圧迫され、炎症を起こすことがある。
- ナイトガード(マウスピース)の使用や、咬み合わせの調整によって、神経を保護することが可能。
このように、神経を抜く必要があるケースはさまざまですが、早期発見・適切な治療を行うことで、神経を残せる可能性が高まります。
神経を抜くとどうなる?リスクとデメリット

・歯の強度が低下し、もろくなる
歯の神経(歯髄)は、単に痛みを感じるだけの組織ではなく、歯に栄養や水分を供給する重要な役割を果たしています。そのため、神経を抜いてしまうと、歯の強度が大幅に低下し、もろくなってしまうのです。
1. 神経を抜くことで歯が弱くなる理由
- 歯髄(神経)がなくなると、歯に栄養が届かなくなる
- 健康な歯は適度に水分を含み、しなやかさを保っています。
- しかし、神経を抜くと水分供給がなくなり、乾燥した枯れ木のように脆くなります。
- 歯の感覚がなくなり、無意識に強い力がかかる
- 神経がある歯は、過度な力が加わると感覚が働き、それ以上の負担を避けようとします。
- しかし、神経を抜いた歯は感覚がなくなるため、気づかないうちに強く噛みすぎたり、食いしばりの影響を受けやすくなります。
2. もろくなることで起こるリスク
- 歯の破折(割れ・ひび)
- 神経を抜いた歯は内部が乾燥し、衝撃に弱くなります。
- その結果、噛んだ瞬間に歯が割れる「歯根破折」が起こりやすくなります。
- 歯根が割れると、多くのケースで抜歯が必要になります。
- 詰め物や被せ物が取れやすくなる
- 神経を抜いた歯は、健康な歯に比べて接着力が弱くなるため、詰め物や被せ物が取れやすくなります。
- 定期的なメンテナンスが必要になり、治療の繰り返しが増えることもあります。
3. 予防策:神経を抜いた歯を守る方法
- 被せ物(クラウン)で補強する
- 割れやすい歯を補強するために、神経を抜いた歯には被せ物を装着するのが一般的です。
- 特に奥歯は強い力がかかるため、金属やセラミックのクラウンで補強することが推奨されます。
- ナイトガード(マウスピース)を使用する
- 歯ぎしりや食いしばりを防ぐことで、神経を抜いた歯の負担を軽減できます。
・歯が変色しやすくなる
神経を抜いた歯は、時間の経過とともに黒ずんだり、黄色っぽく変色することがあります。これは、歯の内部で起こる変化が原因となっています。
1. なぜ神経を抜くと歯が変色するのか?
- 神経がなくなると血流が途絶え、歯が死んだ状態になる
- 健康な歯は内部に血管が通っており、白く透明感のある色をしています。
- しかし、神経を抜いた歯は血流がなくなるため、徐々に黄ばみや黒ずみが生じます。
- 歯の内部で残った血液やタンパク質が変質する
- 神経を抜いた後、歯の内部に残った血液やタンパク質が時間とともに変色し、歯の色が暗くなります。
- 詰め物や被せ物の影響
- 金属の詰め物(銀歯など)が原因で、歯が黒ずむこともあります。
- 近年は金属を使わないセラミック治療が主流になりつつあります。
2. 変色した歯の見た目を改善する方法
- ウォーキングブリーチ(内部漂白)
- 歯の内部に漂白剤を入れて歯を白くする方法。
- ただし、効果が出るまで数回の処置が必要。
- セラミックの被せ物(クラウン)を装着する
- 前歯など目立つ部分の変色が気になる場合、セラミッククラウンを装着することで自然な白さを取り戻せる。
- ホワイトニングは効果がない場合も
- 通常のホワイトニング(外側からの漂白)は、神経を抜いた歯の変色には効果がないことが多いため、内部からのアプローチが必要。
・再感染や再治療のリスクが高まる
神経を抜いた歯は、一度治療を終えてもその後のトラブルが発生しやすいというデメリットがあります。
1. 根管治療の成功率には限界がある
- 根管治療(神経を抜く治療)は100%成功するとは限らない。
- 内部の細菌を完全に除去できなかった場合、再感染することがある。
- 根管の形は人によって異なり、細かい部分に細菌が残ってしまうリスクがある。
- 治療後数年経ってから症状が再発することも。
2. 被せ物の下で虫歯が再発することも
- 根管治療後の歯は神経がないため、虫歯が進行しても痛みを感じにくい。
- 被せ物の下で虫歯が進行すると、気づいたときには手遅れになっていることがある。
3. 再治療を避けるためにできること
- 精密な根管治療を受ける
- マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用した根管治療を行う歯科医院を選ぶことで、成功率を高められる。
- 治療後も定期検診を受ける
- 3〜6ヶ月ごとに歯科検診を受け、トラブルがないかチェックすることが重要。
歯の神経を守るためにできる治療法とは?

・歯髄温存療法(MTAセメントや覆髄治療)
歯髄温存療法とは、神経を抜かずに保存するための治療法です。虫歯が神経に近い部分まで進行していても、適切な処置を行うことで、神経を生かしたまま歯の機能を維持できる可能性があります。
1. 覆髄(ふくずい)治療とは?
- 虫歯を削る際に神経が一部露出した場合、神経を保護する薬剤を塗布し、詰め物をして封鎖することで神経を守る治療法。
- 覆髄治療には2種類の方法がある。
- 直接覆髄法:神経が一部露出した場合、その部分に薬剤を塗布し、保護する方法。
- 間接覆髄法:神経が完全に露出する前に、虫歯を削る範囲を最小限に抑え、薬剤を塗布して治癒を促す方法。
2. MTAセメントによる神経保護
- 高い生体親和性:人体に悪影響を及ぼさず、歯髄の回復を促進する効果がある。
- 強力な封鎖性:神経の表面にバリアを作り、細菌の侵入を防ぐ。
- 再石灰化の促進:歯の組織が自然に回復するのを助ける。
- MTAセメントを使用することで、神経を抜くしかなかったケースでも、温存できる可能性が高まる。
・なるべく削らない治療(MI治療)
従来の虫歯治療は「虫歯の部分をしっかり削り取る」ことが基本でしたが、削りすぎると歯の強度が低下し、神経に達するリスクが高まります。最近では「なるべく削らない(MI:Minimal Intervention)」治療が注目されており、歯をできるだけ温存することが重視されています。
1. MI治療のメリット
- 歯の神経を残しやすくなる:最小限の削除で済むため、神経に達するリスクを抑えられる。
- 歯の寿命が延びる:健康な部分をできるだけ残すことで、歯がもろくなるのを防ぐ。
- 痛みや侵襲を最小限に抑えられる:従来の削る治療に比べて、麻酔の使用が少なく済むことも多い。
2. MI治療の代表的な方法
- エアフロー:特殊なパウダーを吹き付けて虫歯を除去。削らずに健康な歯を守る。
- ICON(アイコン)治療:虫歯の進行を止める特殊な樹脂を塗布し、削らずに治療する。
- レーザー治療:神経を守るために、レーザーを使って虫歯を除去する方法。
・予防的な歯科ケアとメンテナンス
虫歯が進行してしまうと、どんなに優れた治療法があっても神経を抜くリスクがゼロにはなりません。 そのため、虫歯を未然に防ぐための予防ケアが不可欠です。
1. 正しい歯磨きとフッ素活用
- フッ素配合の歯磨き粉を使用する:フッ素は歯の再石灰化を促進し、初期虫歯の進行を防ぐ。
- 歯間ブラシ・デンタルフロスを活用する:虫歯の多くは歯と歯の間から発生するため、歯間ケアは欠かせない。
- 電動歯ブラシの活用もおすすめ:手磨きに比べて、より細かい振動で歯垢を除去しやすい。
2. 定期検診とプロフェッショナルケア
- 3〜6ヶ月に1回の歯科検診を受ける:虫歯や歯周病の早期発見につながり、重症化を防ぐことができる。
- 歯のクリーニング(PMTC)を受ける:歯科医院で行うプロフェッショナルなクリーニングにより、虫歯や歯周病のリスクを軽減。
- 噛み合わせのチェックも重要:不適切な噛み合わせは、歯に過度な負担をかけ、神経を傷める原因になることがある。
3. 生活習慣の見直し
- 砂糖の摂取量を減らす:虫歯の原因となる糖分をコントロールし、口内環境を健康に保つことが重要。
- 食事の回数や時間を意識する:ダラダラ食べは口内が酸性になりやすく、虫歯のリスクが高まる。
- 唾液の分泌を促進する:唾液には虫歯予防の働きがあるため、しっかり噛むことを意識する。
「削らない・抜かない」先進的なの歯科治療

・ドックベストセメント治療とは?
従来の虫歯治療では、感染部分を削り取ることが一般的でしたが、ドックベストセメント治療では、虫歯部分に特殊なセメントを塗布し、細菌を殺菌しながら歯を再生させる方法を採用します。
1. ドックベストセメントとは?
- 銅イオンを含む特殊なセメントを使用し、虫歯菌を不活性化。
- 削る範囲を最小限に抑え、歯の構造をできるだけ残す治療法。
2. ドックベストセメント治療のメリット
- 削る量が少ない:神経を抜くリスクを抑えながら治療が可能。
- 痛みが少ない:麻酔を使わないケースが多く、痛みに敏感な人にも適している。
- 神経を守る確率が高い:虫歯の進行を抑えながら、歯の自然治癒を促進。
3. ドックベストセメントの適応ケース
- 初期〜中等度の虫歯(C1~C2)。
- 神経に近い部分まで虫歯が進行しているが、炎症が軽度な場合。
- できるだけ歯を削りたくない人や、神経を抜きたくない人。
・レーザー治療で神経を守る方法
レーザー治療は、従来のドリルを使わず、虫歯部分のみをピンポイントで除去する治療法です。
1. レーザー治療の特徴
- 細菌を殺菌しながら治療:再発リスクを低減。
- 痛みや振動が少ない:従来のドリルとは異なり、歯を削る際の振動がないため、不快感が少ない。
- 神経を温存しやすい:必要最小限の治療が可能なため、神経に近い虫歯でも抜髄を回避できることが多い。
2. レーザー治療が有効なケース
- 虫歯の進行が軽度~中程度である場合(C1~C2)。
- 神経に近い虫歯でも、保存可能な状態の場合。
- 歯周病治療や根管治療にも応用可能。
3. レーザー治療のデメリット
- すでに神経が強く炎症を起こしている場合は適応できない。
- すべての歯科医院で導入されているわけではない(レーザー機器が高価なため)。
・再石灰化を促すフッ素やカルシウム療法
初期虫歯(C1)であれば、削らずに再石灰化を促進することで、自然に修復できる可能性があります。
1. 再石灰化とは?
- 歯の表面のエナメル質は、酸によって脱灰(だっかい)されるが、カルシウムやリン酸の働きで再石灰化されることで修復される。
- この自然な修復作用を促進することで、初期の虫歯を削らずに治すことが可能。
2. 再石灰化を促す方法
- フッ素塗布:歯科医院での高濃度フッ素塗布(9000ppm)により、虫歯の進行を食い止める。
- カルシウム・リン酸塩を含む歯磨き粉を使用:MIペーストなどを活用し、エナメル質の修復をサポート。
- キシリトールの活用:虫歯菌の働きを抑え、再石灰化を促進。ガムやタブレットで摂取可能。
3. 再石灰化療法の適応ケース
- 初期虫歯(C1)の段階である場合。
- フッ素やカルシウムの働きを利用して自然修復が可能な範囲の虫歯。
- 歯科医院の定期検診を受けながら経過観察できる場合。
歯の神経を守るためにできるセルフケア

・正しい歯磨きと歯間ケアの重要性
毎日の歯磨きは、虫歯や歯周病を防ぎ、神経を抜くリスクを減らすための基本的なケアです。
1. 正しい歯磨きのポイント
歯ブラシの選び方
- 毛先がやわらかめ~普通のものを選ぶことで、歯ぐきを傷つけずにしっかり汚れを落とせる。
- ヘッドが小さめのものを選ぶと、奥歯の細かい部分まで届きやすい。
ブラッシングの基本
- 歯と歯ぐきの境目にブラシを45度の角度で当てる。
- 1本1本を意識し、小刻みに動かして磨く(ゴシゴシ強く磨かない)。
- 1回の歯磨きは最低3分間を目安に、しっかり時間をかける。
フッ素入り歯磨き粉を活用
- フッ素は歯のエナメル質を強化し、再石灰化を促す効果がある。
- 歯磨き後は軽く口をゆすぐだけにするとフッ素の効果が持続しやすい。
2. 歯間ケアの重要性
- デンタルフロス(糸ようじ):歯と歯の間の汚れを取り除くために使用し、虫歯・歯周病予防に効果的。
- 歯間ブラシ:歯ぐきが下がり、歯の隙間が広がっている場合に有効。歯ぐきのマッサージ効果もある。
3. 電動歯ブラシの活用
- 手磨きよりも振動数が多いため、短時間で汚れを落とせる。
- 特に、神経に近い虫歯を防ぐには、より精密な歯磨きが必要。
- 力を入れすぎると歯ぐきを傷めるため、正しい使い方を心がける。
・食生活で歯を強くする方法
食事の内容や食べ方は、歯の健康に大きく影響します。
1. 歯を強くする栄養素
- カルシウム(Ca):歯のエナメル質を強化(牛乳、チーズ、ヨーグルト、小魚、大豆製品)。
- リン(P):カルシウムと結びつき、歯や骨を強化(卵、ナッツ、レバー、肉類)。
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助け、歯の石灰化を促進(サーモン、イワシ、キノコ類)。
- マグネシウム(Mg):歯の再石灰化をサポート(バナナ、ほうれん草、玄米)。
2. 虫歯になりやすい食べ物・なりにくい食べ物
虫歯になりやすい食品
- 砂糖を多く含む食品(お菓子、ジュース)。
- 粘着性の高い食品(キャラメル、グミなど)。
歯に良い食品
- カルシウムやリンを多く含む食品(乳製品、魚、大豆製品)。
- 繊維質の多い食品(野菜、果物):噛む回数が増え、唾液の分泌を促すことで口内を浄化する効果がある。
3. 間食の摂り方に注意
- ダラダラ食べを避ける:口の中が長時間酸性状態になり、虫歯リスクが高まる。
- 食後はすぐに水で口をゆすぐ:食後に軽くうがいをすることで、酸を中和しやすくなる。
・定期検診とクリーニングのメリット
日々のセルフケアだけでは落としきれない汚れや、気づかない初期虫歯を早期発見するために、定期的な歯科検診が重要です。
1. 歯科検診の頻度
- 3〜6ヶ月に1回の定期検診を受けるのが理想。
- 虫歯の早期発見により、神経を抜かずに治療できる可能性が高まる。
2. プロフェッショナルケアで虫歯・歯周病を予防
- スケーリング(歯石除去):歯石は自分では取り除けないため、定期的なクリーニングが必要。
- フッ素塗布:歯を強化し、虫歯予防効果を高める。
3. かみ合わせのチェックも大切
- かみ合わせが悪いと、特定の歯に負担がかかり、神経がダメージを受ける原因になる。
- 必要に応じてナイトガード(マウスピース)を作成し、歯ぎしりや食いしばりを防ぐことも重要。
歯の痛みがあるときにすぐにできる対処法

・市販薬や痛み止めの正しい使い方
歯が痛くなったとき、すぐに歯科医院に行けない場合の応急処置として、市販薬や痛み止めを正しく使用することが重要です。
1. 市販の痛み止めの種類と選び方
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
- イブプロフェン(例:イブ、バファリンルナ、ロキソニン)
- アセトアミノフェン(例:タイレノール)(胃に優しく、小児や妊婦でも使用しやすい)
- ロキソプロフェン(例:ロキソニンS)(強い鎮痛効果があるが、胃の負担が大きいため注意)
2. 局所麻酔成分が入った塗り薬
- 歯ぐきや患部に直接塗布することで、一時的に痛みを和らげる効果がある。
- 例:デンタルクリーム、オラフルEX
3. 痛み止めの正しい飲み方
- 空腹時に飲まない(胃を荒らす可能性があるため、食後に飲むのがベスト)。
- 規定量を守る(過剰摂取すると、副作用が出る可能性がある)。
- お酒と一緒に飲まない(アルコールと痛み止めの成分が相互作用し、体に負担がかかる)。
4. 痛み止めを使っても痛みが続く場合は?
- 痛みが強すぎる場合、炎症が進行している可能性が高いため、早めに歯科医院を受診する。
- 痛み止めが効かない場合、神経が深く炎症を起こしている可能性がある。
- 長期間、市販薬でしのぐのは危険(症状が悪化し、治療が難しくなる可能性がある)。
・痛みを悪化させないための注意点
歯が痛いときに間違った対処をすると、かえって痛みが悪化することがあります。
1. 患部を温めない
- 炎症がある場合、温めると血流が増えて腫れや痛みが悪化する。
- 特にお風呂や蒸しタオルなどで顔を温めるのはNG。
- 冷やす方が痛みを和らげることができる場合が多い。
2. 強いうがいをしない
- 虫歯や根尖部の炎症がある場合、強くうがいをすると内部の炎症が広がる可能性がある。
- うがいをする場合は、ぬるま湯か薄い塩水で優しく行うのがベスト。
3. 過度な刺激を避ける
- 硬いもの・冷たいもの・甘いものを避ける(痛みが増す原因になる)。
- 噛むと痛む場合、反対側の歯で咀嚼する。
・歯科医院に行く前にできる応急処置
歯科医院に行くまでの間、痛みを和らげるためにできる応急処置を知っておくと、より快適に過ごせます。
1. 冷やす(炎症を抑える)
- 頬の外側から氷や冷たいタオルを当てることで、炎症を抑え、痛みを軽減できる。
- 直接氷を歯に当てるのは避ける(知覚過敏がある場合、逆に痛みが悪化することがある)。
- 10分冷やして5分休むを繰り返すのが効果的。
2. 口を清潔に保つ
- 食後は軽くうがいをし、食べかすを取り除く。
- 歯ブラシを使う際は、刺激を与えすぎないように優しく磨く。
- デンタルフロスを使って、歯間の汚れを取り除く(ただし、強く引っ張ると痛みが悪化するため注意)。
3. ガーゼや綿で保護する
- 詰め物が取れた場合や、歯が欠けて神経が露出している場合、ガーゼや綿を詰めると刺激を軽減できる。
- 市販の歯科用ワックスを使用するのも効果的。
4. 市販の歯痛用ジェルの使用
- オラフルEXなど、局所麻酔成分が含まれるジェルを塗布することで、一時的に痛みを抑えることができる。
- ただし、これらはあくまで応急処置であり、根本的な治療にはなりません。
- 早めに歯科医院を受診することが重要です。
神経を抜かずに治療を受けた患者のケース紹介

・早期治療で神経を残せたケース
近年、初期の虫歯や歯のダメージを早期に発見し、迅速に治療を開始することで、神経温存に成功する患者さんが増えています。
- 定期検診でわずかなしみや違和感に気づいた患者さんが、すぐに歯科医院を受診。
- 虫歯が神経に到達する前に、覆髄治療や最小限の削除治療(MI治療)を実施し、神経を保存。
- 痛みの軽減、治療期間の短縮、歯の強度維持につながる結果が報告されている。
- 定期的な検診と早めの対応が、神経温存の鍵となる。
・最新治療で神経を保存できた事例
技術の進歩により、レーザー治療やMTAセメントを用いた神経温存療法が導入され、神経を抜かずに治療を完結できる事例が増えています。
1. レーザー治療の活用
- ピンポイントで感染部分のみを除去し、健康な歯質を残すことが可能。
- 神経へのダメージを最小限に抑えるため、従来のドリル治療よりも神経温存の確率が高まる。
2. MTAセメントの活用
- 高い生体適合性と封鎖効果により、歯髄を保護しながら再石灰化を促進。
- 歯の審美性や機能性を高く維持し、長期的な口腔健康に寄与。
3. 最新治療の選択で神経温存成功
- 従来の根管治療と比べ、より自然な歯を維持できる。
- 医師と十分なカウンセリングを行い、各症例に適した治療を選択することで神経温存が実現。
・定期メンテナンスで神経を守れた成功例
神経温存のための治療は一度の施術だけでなく、その後の定期メンテナンスが極めて重要です。
1. 定期検診の重要性
- 定期的なスケーリングやフッ素塗布で虫歯や歯周病の進行を防ぐ。
- 噛み合わせの調整により、神経への負担を軽減。
- 歯の状態を常にチェックし、初期の変化を見逃さずに対応。
2. 予防的アプローチの成功例
- 日々のセルフケア(正しい歯磨き・フロス使用)を徹底した患者さんが、神経温存に成功。
- 歯科医院と連携し、定期フォローアップを受けることで、将来的な抜髄治療を回避。
このようなケースからもわかるように、早期治療・最新技術の活用・定期的なメンテナンスが神経を守るカギとなります。
神経を抜かない治療を受けるための歯科医院の選び方

・できるだけ削らない・抜かない治療をしているか?
歯の神経を守るためには、できるだけ削らず、神経を抜かない治療を積極的に取り入れている歯科医院を選ぶことが重要です。近年、「MI(Minimal Intervention)治療」と呼ばれる最小限の介入で歯を守る治療法が注目されています。
1. 削らない・抜かない治療を推奨する医院の特徴
- レーザー治療やMTAセメントを使用した神経温存療法を実施している。
- 治療前にカウンセリングをしっかり行い、複数の治療方法を提示してくれる。
- MI治療(最小限の削除治療)に力を入れている。
2. 削らない・抜かない治療を実践する医院を見極める方法
- 医院の公式サイトをチェックし、「削らない」「神経を残す」などの治療理念が明記されているか確認。
- Googleの口コミやSNSの評判を調べ、実際の患者の声を参考にする。
- 初診時の説明の丁寧さを確認し、患者の希望をしっかり聞いてくれるかチェックする。
・最新の神経温存治療に対応しているか?
昔なら神経を抜くしかなかったケースでも、現在では最新の神経温存治療によって神経を保存できる可能性が高まっています。
1. 最新の神経温存治療を提供する医院の特徴
- MTAセメントや覆髄治療を行っている。
- レーザー治療を導入し、削る量を最小限に抑えながら神経を保護する治療が可能。
- 歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を活用し、精密な治療を実施。
2. 最新治療を導入している医院の見分け方
- 公式サイトで治療内容を確認し、MTAセメントやレーザー治療の導入が明記されているかチェック。
- マイクロスコープやCTスキャンなど、最新設備が整っている医院を選ぶ。
- 治療実績のある医院を選び、どれくらいの症例を治療しているか確認する。
・丁寧なカウンセリングと説明があるか?
歯の神経を守るためには、患者と歯科医師がしっかりとコミュニケーションを取ることが不可欠です。
1. 信頼できる歯科医院のカウンセリングとは?
- 治療方法を複数提示し、メリット・デメリットをしっかり説明してくれる。
- 患者の希望を尊重し、無理に神経を抜く治療を勧めない。
- 診断に時間をかけ、詳細な検査を行う。
2. 患者目線での治療方針があるかを見極める
- 治療前後の説明をしっかりしてくれるか?
- 質問にしっかり答えてくれるか?
- 治療の記録や写真を見せてくれるか?
これらのポイントを押さえることで、神経を抜かずに済む可能性の高い歯科医院を見つけることができます。
歯の神経を守るためにできること

・早期治療の大切さを知る
歯の神経を守るためには、虫歯が進行する前に早めに治療を受けることが最も重要です。痛みが出てからではなく、違和感を感じた段階で受診することで、神経を温存できる可能性が大幅に高まります。
1. 痛みが出る前に治療を受けるべき理由
- 虫歯がC1(エナメル質の虫歯)やC2(象牙質の虫歯)であれば、神経を残せる確率が高い。
- C3(歯髄まで達した虫歯)になると、根管治療(神経を抜く治療)が必要になる可能性が高くなる。
- 虫歯が進行して神経に達すると、炎症が広がり神経温存が難しくなる。
- 早期治療なら覆髄治療やMTAセメントを用いた神経保護治療が可能。
2. 「しみる」「違和感がある」段階で受診することがカギ
- 冷たいものや甘いもので歯がしみる → 初期虫歯や知覚過敏の可能性。
- 噛むと違和感がある、軽い痛みがある → 進行した虫歯の可能性。
- 何もしていなくても痛い → 神経が炎症を起こしている可能性が高く、早急な治療が必要。
3. 定期検診で早期発見を心がける
- 3~6ヶ月に1回の歯科検診を受けることで、小さな虫歯を発見できる。
- 歯科医師による専門的なチェックを受けることで、神経を抜かずに治療できる確率がアップ。
・予防を意識したセルフケアを徹底する
神経を抜く必要のない健康な歯を維持するためには、日々のセルフケアが欠かせません。正しい歯磨きや食生活の見直しを行うことで、虫歯のリスクを減らし、神経を守ることができます。
1. 正しい歯磨きの習慣を身につける
- フッ素入り歯磨き粉を使用し、再石灰化を促進する。
- 歯間ブラシやデンタルフロスを使い、歯と歯の間の汚れを除去する。
- 電動歯ブラシを活用し、効率的にプラークを除去する。
2. 歯に良い食生活を意識する
- カルシウム・リンを多く含む食品を摂取し、歯を強くする(牛乳、チーズ、小魚など)。
- 砂糖の摂取を減らし、虫歯菌の繁殖を防ぐ。
- キシリトール入りのガムを噛み、虫歯予防を促進する。
3. 口腔環境を整える習慣をつける
- 寝る前にしっかり歯を磨き、就寝中の虫歯リスクを減らす。
- ドライマウスを防ぐために、水分補給を意識する。
- 口呼吸を改善し、口腔内の乾燥を防ぐ(鼻呼吸を意識する)。
・「抜かない・削らない」治療を行う歯科医院を選ぶ
神経を守るためには、信頼できる歯科医院を選ぶことも重要です。削る量を最小限に抑え、最新の神経温存治療を取り入れている歯科医院を選ぶことで、神経を抜かずに済む可能性が高くなります。
1. 削らない・抜かない治療を実践している医院を選ぶ
- MTAセメントやレーザー治療を導入しているかを確認。
- 削る範囲を最小限に抑える「MI(Minimal Intervention)治療」を採用しているかをチェック。
- 神経温存のためのカウンセリングをしっかり行ってくれる医院を選ぶ。
2. 患者の希望を尊重してくれる医院を探す
- すぐに「神経を抜きましょう」と言わず、できるだけ保存する選択肢を提案してくれる医院がベスト。
- 患者の質問に丁寧に答え、治療のメリット・デメリットをしっかり説明してくれるかどうかが重要。
3. 治療後のアフターケアが充実している医院を選ぶ
- 神経を温存した後も、定期的なフォローアップを行う歯科医院を選ぶことが大切。
- 定期メンテナンスを受けることで、神経を守り続けることができる。
監修:広尾麻布歯科
所在地〒:東京都渋谷区広尾5-13-6 1階
電話番号☎:03-5422-6868
*監修者
広尾麻布歯科
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
・日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
・東京都式根島歯科診療所 勤務
・長崎県澤本歯科医院 勤務
・医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
・愛育クリニック麻布歯科ユニット 開設
・愛育幼稚園 校医
・愛育養護学校 校医
・青山一丁目麻布歯科 開設
・区立西麻布保育園 園医
*所属
・日本歯科医師会
・東京都歯科医師会
・東京都港区麻布赤坂歯科医師会
・日本歯周病学会
・日本小児歯科学会
・日本歯科審美学会
・日本口腔インプラント学会