1.「歯医者さん、何年ぶりだろう…」その一歩を踏み出せないあなたへ

「歯が痛むけれど、歯医者に行くのが怖い」「口の中がボロボロで、見せるのが恥ずかしい…」そんな風に感じて、歯科医院から足が遠のいて、気づけば5年、10年と経ってしまった、という方はいらっしゃいませんか?
「こんなになるまで放っておいて、先生に怒られるんじゃないか」「呆れられてしまうかもしれない」という不安から、予約の電話をかける勇気が出ない。そのお気持ち、私たちは痛いほどよく分かります。しかし、どうか知ってください。あなたが勇気を振り絞って踏み出そうとしているその一歩を、私たちは決して笑ったり、責めたりはしません。むしろ、その勇気に敬意を表し、心から「よく来てくださいました」という気持ちで、あなたをお迎えします。この記事は、様々な理由で歯科医院から足が遠のいてしまった全ての人のために、私たちが伝えたい想いを綴ったものです。
2. なぜ私たちは「歯医者が恥ずかしい」と感じてしまうのか?

・「自己管理ができていない」と思われたくないという気持ち
現代社会において、「健康管理は自己責任」という風潮は、年々強まっているように感じられます。テレビやインターネットでは、健康に関する情報が溢れ、オーラルケアの重要性も広く知られるようになりました。だからこそ、お口の中に虫歯や歯周病といったトラブルを抱えていると、「ちゃんと歯磨きをしてこなかった、だらしない人間だと思われてしまうのではないか」「健康意識の低い人間だと見下されるのではないか」という不安や羞恥心が芽生えてしまうのです。これは、学校のテストで悪い点数を取った答案を先生に見せる時の、あの居心地の悪さに似ています。自分の「できていない部分」や「怠ってしまった部分」を、専門家である歯科医師や歯科衛生士に評価され、ジャッジされるような感覚に陥ってしまうのです。特に、真面目で責任感の強い方ほど、この傾向は強くなるかもしれません。しかし、実際には仕事や育児、介護など、人それぞれに様々な事情があり、自分のケアを後回しにせざるを得ない状況は誰にでも起こり得ます。その背景を抜きにして、結果だけを見て「自己管理ができていない」と断罪されることへの恐れが、私たちを歯科医院から遠ざける大きな心理的障壁となっているのです。
・口の中は究極のプライベート空間。他人に見られることへの抵抗感
お口の中というのは、非常にデリケートでプライベートな空間です。普段、家族や恋人といった、ごく親しい間柄の人にさえ、まじまじと見せることはないでしょう。その極めて個人的な空間を、治療のためとはいえ他人に、しかも至近距離で、隅々まで観察されるという行為には、本能的な抵抗感や羞恥心を伴います。さらに、長年放置してしまったお口の中には、着色汚れや歯石、口臭といった、自分自身でもコンプレックスに感じている問題が隠されているかもしれません。「こんな汚い口の中を見せるなんて…」という気持ちは、裸を見られること以上の恥ずかしさを感じる方もいらっしゃるほどです。また、治療中は、大きく口を開けた無防備な状態で、何をされているか自分ではよく見えないという不安感もつきまといます。顔のすぐそばで機械音が鳴り、水しぶきが飛ぶ。そんな非日常的な状況下で、自分の最もプライベートな部分を委ねなければならないという事実は、たとえそれが医療行為だと頭では理解していても、感情的な抵抗感を生むには十分すぎるほどの要因となるのです。この根源的な羞恥心が、理性的な判断を鈍らせ、受診への足かせとなっているケースは非常に多いと言えます。
・過去の「痛い・怖い」という体験がトラウマになっている
「歯医者」と聞いて、多くの方が連想するネガティブなイメージ、それは「痛み」と「恐怖」ではないでしょうか。特に、子どもの頃に経験した歯科治療の記憶が、強烈なトラウマ(心的外傷)として心に刻まれている方は少なくありません。かつての歯科治療では、麻酔技術が未熟であったり、「子どもだから」という理由で十分な説明がないまま治療が進められたりすることも、残念ながらありました。あの独特の薬品の匂い、甲高いドリルの音、そして神経に響くような鋭い痛み―。これらの記憶が、大人になった今でも鮮明に蘇り、歯科医院という場所そのものへの恐怖心や嫌悪感となって、足を遠のかせるのです。この過去のトラウマは、非常に根深い問題です。「痛かったら左手を挙げてくださいね」と言われても、実際に痛くて手を挙げたのに治療を続けられた、というような経験は、医療従事者への不信感にも繋がります。その結果、「どうせまた痛い思いをするに違いない」「自分の訴えは聞いてもらえないかもしれない」という諦めや恐怖が先に立ち、お口に問題が起きても「あの痛みを経験するくらいなら、我慢した方がマシだ」という思考に陥ってしまうのです。この「恐怖心」が、「恥ずかしい」という気持ちと結びついた時、歯科医院へのハードルは、さらに高く、乗り越えがたいものになってしまうのです。
3. 歯科医師の“本音”をお話しします。私たちはあなたの口の中を見て、どう感じているか

長年歯科医院から足が遠のいてしまった方が抱える不安の中で、最も大きいものの一つが「歯科医師やスタッフに、どう思われるだろうか」という点ではないでしょうか。
「こんなにひどい状態で来て、呆れられるんじゃないか」「きっと心の中では、だらしない患者だと思っているに違いない」―そんな風に、私たちの胸の内を想像しては、来院をためらってしまう。そのお気持ちは、想像に難くありません。
しかし、もしその不安が、歯科医院へ向かうあなたの足を止めている最大の理由なのだとしたら、私たちは、ぜひ一度、私たちの「本音」を聞いていただきたいのです。
あなたが想像しているような感情を、私たちは本当に抱いているのでしょうか。
ここでは、普段なかなかお伝えする機会のない、私たち歯科医療従事者が、久しぶりに来院された患者様のお口の中を拝見した時に、偽りなく感じていること、考えていることを、正直にお話ししたいと思います。
この“本音”が、あなたの心にかけられた重い鎖を、少しでも軽くすることができたなら、これほど嬉しいことはありません。
・「ひどい状態」ではなく「治療が必要な状態」と捉えているプロの視点
患者様ご自身は、ご自身のお口の中を「ボロボロだ」「こんなにひどい状態を見せるのは恥ずかしい」とおっしゃいます。
そのお気持ちは、長年のお悩みを反映した、切実なものだと理解しています。
しかし、私たち歯科医師がそのお口の中を拝見した時、頭に浮かぶのは「ひどい」という感情的な言葉ではありません。
私たちは、それを「治療介入が必要な状態である」という、極めて客観的で専門的な視点で捉えています。
それは、例えるなら、腕利きの自動車整備士が、何年も整備されていないクラシックカーを見た時の感覚に近いかもしれません。
サビやへこみを見て「なんてひどい車だ」と嘆くのではなく、「なるほど、エンジンはこうなっているのか。足回りのこの部分から手を入れて、ボディを修復すれば、きっとまた見事に走るようになるだろう」と、瞬時に修理の計画や完成後の姿を思い描くのです。
私たちも同じです。虫歯や歯周病、失われた歯を見て、まず考えるのは「どの歯に、どのような問題が起きているのか」「原因は何か」「どのような治療法を組み合わせれば、機能と見た目を回復できるか」という、診断と治療計画のシミュレーションです。
そこには、患者様を責めたり、人格を評価したりする感情が入り込む余地は一切ありません。
私たちは、目の前の課題を解決するための「プロフェッショナル」として、あなたのお口と向き合っているのです。
・私たちが集中しているのは「なぜ放置したか」ではなく「これからどう最善を尽くすか」
「どうしてこんなになるまで放っておいたんですか?」―もしかしたら、過去にこんな言葉を投げかけられ、深く傷ついた経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、私たちは、そのような過去を詮索し、責めるような問いかけは、治療において何の意味もなさないと考えています。
あなたが今日まで歯科医院に来られなかったのには、きっと様々な理由があったはずです。
仕事が多忙だったのかもしれない。育児に追われていたのかもしれない。あるいは、恐怖心や経済的な問題があったのかもしれない。
その背景を、私たちは尊重します。
私たちの関心とエネルギーが集中しているのは、「なぜ(Why)」という過去の原因追及ではなく、「どうやって(How)」という未来の解決策です。
今、目の前にある問題に対して、現代の歯科医療が持つ知識と技術を総動員し、あなたにとって最善の結果を導き出すために、私たちは何をすべきか。
どの治療法があなたの希望に最も合っているのか。どうすれば、治療に伴う痛みや不安を最小限にできるのか。
私たちの思考は、すべて「これから」に向かっています。
もちろん、治療計画を立てる上で、生活習慣などについてお伺いすることはありますが、それはあなたを責めるためではなく、再発を防ぎ、長期的に安定した状態を維持するための方法を一緒に考えるためです。
過去は変えられませんが、未来はこれからいくらでも良くすることができます。
私たちは、そのためのパートナーでありたいのです。
・実は「勇気を出して来てくれた」ことに心の中で拍手を送っています
これは、決して綺麗事ではなく、多くの歯科医療従事者が共有している偽らざる気持ちです。
何年、あるいは何十年もの間、歯科医院から足が遠のいていた方が、予約の電話をかけ、そして実際に診療チェアに座ってくださる。
その行動が、どれほど大きな勇気を必要とするものであったか、私たちはよく理解しています。
「恥ずかしい」「怖い」「怒られるかもしれない」―そんな幾重もの心理的な壁を乗り越えて、ご自身の健康と向き合おうと決意された。
その事実に対して、私たちは心からの敬意と感謝を感じています。
そして、「よくぞ、来てくださいました」と、心の中で温かい拍手を送っているのです。
あなたがその一歩を踏み出してくださったからこそ、私たち専門家は、ようやくあなたのお手伝いをすることができます。
悪化の一途をたどっていたかもしれないお口の状態に、ストップをかけ、回復へと向かうレールを敷くことができるのです。
その最初のきっかけを作ってくださったのは、他の誰でもない、あなた自身の勇気です。
私たちは、その勇気を決して無駄にはしません。
あなたのその思いに応えるべく、持てる知識と技術のすべてを尽くして、誠心誠意、治療にあたることをお約束します。
ですから、どうか安心して、あなたのその大きな一歩を、私たちに委ねてみてください。
「恥ずかしい」という気持ちが引き起こす、本当に怖い3つのこと

・リスク① 健康:お口の問題が、全身の病気に繋がる可能性
「お口は万病の元」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、単なる言い伝えや脅し文句ではありません。近年の数多くの研究によって、お口の中の健康状態が、全身の健康に極めて深く関わっていることが科学的に証明されています。特に、進行した歯周病は、その代表格です。歯周病によって炎症を起こした歯ぐきは、細菌やその毒素が体内に侵入するための「開いた窓」のような状態になります。血流に乗って全身を巡った歯周病菌は、体の様々な場所で悪影響を及ぼします。例えば、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害し、糖尿病を悪化させることが知られています。また、血管の壁に付着して動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞といった、命に関わる病気のリスクを高める可能性も指摘されています。さらに、誤嚥によって歯周病菌が肺に入り込むことで、高齢者の死亡原因の上位を占める誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。お口の問題を放置するということは、単に歯を失うリスクだけでなく、こうした全身の重大な病気のリスクをも高めてしまう、非常に危険な行為なのです。「恥ずかしい」という一時的な感情のために、生涯にわたる健康を危険に晒すことは、あまりにも大きな代償と言わざるを得ません。お口のケアは、全身の健康を守るための、最も身近で効果的な第一歩なのです。
・リスク② 時間:先延ばしにするほど、治療期間は長くなるという現実
「いつか行こう」と思いながら、一日、また一日と受診を先延ばしにしてしまう。その間にも、お口の中の病気は、あなたの都合を待ってはくれません。時間は、病気の進行を加速させる、最も残酷な要素の一つです。例えば、ごく初期の小さな虫歯であれば、簡単な詰め物をするだけで、たった1回の治療で完了することがほとんどです。治療時間も短く、体への負担も最小限で済みます。しかし、その小さな虫歯を放置し、痛みを我慢し続けた結果、虫歯が歯の神経にまで達してしまったらどうなるでしょうか。治療は、歯の根の中をきれいにする「根管治療」が必要になります。この治療は非常に精密で時間を要するため、治療完了までに何度も、場合によっては数ヶ月にわたって通院しなければならなくなります。歯周病も同様です。歯ぐきからの出血だけだった初期の段階であれば、数回のクリーニングで改善が見込めますが、歯を支える骨が溶け始める段階まで進行してしまうと、治療はさらに複雑で長期間にわたるものになります。「恥ずかしい」という気持ちから受診をためらっていた数年間が、結果的に、何か月もの治療期間という形で、あなたの貴重な時間を奪うことになるのです。時間はお金では買えません。早く治療を始めていれば、その時間をもっと別の、楽しいことに使えたはずです。先延ばしは、あなたの未来の時間を前借りしているのと同じことなのです。
・リスク③ 費用:小さな治療で済んだはずが、大掛かりで高額な治療になることも
健康や時間と並んで、受診を先延ばしにすることがもたらすもう一つの大きなリスク、それは「経済的な負担の増大」です。これも、時間のリスクと密接に関連しています。病状が軽微なうちであれば、治療は比較的シンプルで、費用も公的医療保険の範囲内で、比較的安価に抑えることができます。例えば、初期の虫歯治療であれば、自己負担額は数千円程度で済むでしょう。しかし、放置して虫歯が大きくなり、神経の治療を経て、最終的に歯を大きく削って被せ物(クラウン)をしなければならなくなった場合、費用は数万円単位に跳ね上がります。さらに進行し、残念ながら歯を抜かなければならなくなった場合、その後の選択肢としてブリッジや入れ歯、あるいはインプラントといった治療が必要になります。これらの治療は、失われた歯の機能を補うための大掛かりなものであり、特に審美性や機能性の高い治療法を選択した場合、費用は数十万円から、場合によってはそれ以上かかることも決して珍しくありません。「恥ずかしいから」と歯科医院に行かなかった結果、たった数千円で済んだはずの治療が、その何十倍、何百倍もの費用となって、あなたの家計に重くのしかかってくるのです。これは、まさに「安物買いの銭失い」ならぬ、「先延ばしの高額払い」です。お口の健康への早期の投資は、将来の大きな出費を防ぐ、最も賢明な自己投資の一つと言えるでしょう。
5.ご安心ください。現代の歯科医院は、あなたの想像する場所とは違うかもしれません

「歯医者」と聞いて、あなたが思い浮かべるのは、どのような光景でしょうか。独特の薬品の匂いが立ち込める待合室、顔にタオルをかけられ、何をされているか分からないまま鳴り響く甲高いドリルの音、そして、神経に突き刺さるような鋭い痛み―。もし、あなたの記憶の中の歯医者が、10年、20年前で止まっているのだとしたら、そのネガティブなイメージが、受診への大きな壁となっているのも無理はありません。しかし、どうか知ってください。この10年、20年という歳月の中で、医療の世界は、あなたが想像している以上に、目覚ましい進歩を遂げています。特に歯科医療の分野では、患者様の苦痛や不安をいかに軽減し、快適に治療を受けていただくかという点において、技術的にも、そして考え方においても、大きな変革が起きています。あなたが恐れているその場所は、もはや過去の遺物となりつつあるのかもしれません。ここでは、現代の歯科医院が、かつての「痛い・怖い・分からない」場所から、いかに「痛みに配慮し、安心でき、信頼できる」場所へと進化を遂げているのか、その具体的な変化についてご紹介します。この情報が、あなたの固く閉ざされた心の扉を、少しでも開くきっかけとなることを願っています。
痛みを最小限に抑えるための技術の進歩(麻酔、治療器具など)
現代の歯科治療における最大のテーマの一つは、「いかに痛みをコントロールするか」ということです。私たちは、患者様が感じる痛みを最小限に抑えるため、様々な技術と工夫を凝らしています。その代表格が、麻酔技術の進歩です。多くの方が苦手とする麻酔注射の「チクッ」とする痛み。これを和らげるために、多くの医院では、まず歯ぐきに「表面麻酔」という塗り薬やスプレータイプの麻酔を施します。これにより、注射針が入る瞬間の感覚を鈍らせることができます。さらに、使用する注射針も、かつてに比べて格段に細い「極細針」が開発されており、刺さる時の痛みを大幅に軽減しています。そして、麻酔液を注入する際の圧力による痛みを防ぐため、「電動麻酔注射器」を導入している医院も増えています。これは、コンピューター制御によって、常に一定の速度で、ゆっくりと麻酔液を注入することができるため、手動の注射で起こりがちな圧痛を最小限に抑えることが可能です。また、歯を削る治療器具も進化しています。かつてのタービン(ドリル)に比べて、振動や音が格段に少ない器具や、虫歯の部分だけを選択的に除去できるレーザー治療器なども登場し、治療中の不快感を和らげる選択肢が増えています。もはや、「歯の治療は痛いのが当たり前」という時代ではないのです。
プライバシーに配慮した個室・半個室の診療環境
「隣の患者さんの治療内容が丸聞こえ」「他の人に見られているようで落ち着かない」―そんな経験から、歯科医院に苦手意識を持ってしまった方もいらっしゃるかもしれません。お口の中という極めてプライベートな空間を扱う場所でありながら、かつての歯科医院は、プライバシーへの配慮が十分でないこともありました。しかし、現代の歯科医院では、患者様が安心してリラックスできる環境作りが非常に重要視されています。その一つの答えが、「個室」または「半個室」の診療室です。他の患者様の視線や会話を気にすることなく、落ち着いた空間で治療に集中していただけるよう、診療台ごとにパーテーションで区切ったり、完全に独立した個室を設けたりする医院が増えています。これにより、お口のお悩みや治療に関するデリケートな相談も、周囲を気にすることなく、じっくりと話すことができます。「こんなことを聞くのは恥ずかしい」と感じるような費用や期間に関する質問も、プライベートな空間であれば、気兼ねなく尋ねることができるでしょう。私たちは、患者様が安心して心を開ける環境を整えることが、信頼関係を築く上での第一歩だと考えています。あなたが過ごす治療の時間は、誰にも邪魔されない、あなたと私たち医療スタッフだけの、大切な時間なのです。
あなたの話をじっくり聞く「カウンセリング」の時間を大切にしています
「何も説明されないまま、いきなり歯を削られた」―これも、過去の歯科医院でよく聞かれた不満の一つです。患者様が何を望み、何に不安を感じているのかを理解しないまま、歯科医師の判断だけで治療を進めてしまう。そんな一方的な医療は、もはや過去のものです。現代の歯科医療で最も重視されていることの一つが、「インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)」であり、そのために私たちは「カウンセリング」の時間を何よりも大切にしています。初診の際には、いきなり診療台に座っていただくのではなく、まず専用のカウンセリングルームなどで、あなたのお話をじっくりと伺います。今、一番困っていることは何か。どのような治療を望んでいるのか。過去の治療で嫌だった経験は何か。費用や期間について、どのような希望があるか。あなたの言葉に真摯に耳を傾け、あなたの価値観や背景を理解することから、私たちの仕事は始まります。そして、検査の結果をもとに、考えられる治療法の選択肢を複数提示し、それぞれのメリット・デメリット、期間、費用などを丁寧に説明します。あなたがすべての情報を理解し、納得した上で、一緒に治療方針を決めていく。このプロセスこそが、治療への不安を解消し、信頼関係を築く上で不可欠だと、私たちは信じています。あなたはお客様ではなく、治療というゴールに向かって共に歩む「パートナー」なのです。
6.予約から初診当日までの流れ|「久しぶりです」の一言で大丈夫

「よし、歯医者に行ってみよう」―そう決意したあなた。その勇気ある一歩に、心から敬意を表します。しかし、いざ行動に移そうとすると、「電話で何て言えばいいんだろう?」「行ってから、どんなことをされるんだろう?」と、次なる不安が頭をもたげてくるかもしれません。特に、何年も歯科医院から足が遠のいていると、そのシステムや流れが全く分からず、予約の電話一本かけることすら、非常に高いハードルに感じられるものです。でも、ご安心ください。あなたがすべきことは、決して難しいことではありません。すべてを完璧に準備する必要も、専門用語を知っている必要もありません。この項目では、あなたがその大きな一歩をスムーズに踏み出せるよう、予約の段階から初診当日の具体的な流れまでを、ステップ・バイ・ステップで詳しくご案内します。この「地図」を手にしておけば、未知の場所へ向かう不安は、きっと和らぐはずです。さあ、一緒にシミュレーションしてみましょう。
予約の電話・Web予約で伝えるべきこと
まず最初の関門は、予約の連絡です。最近では、電話だけでなく、24時間いつでも予約ができるWeb予約システムを導入している医院も増えています。あなたにとって、やりやすい方法を選んでください。そして、何を伝えればいいのか、と身構える必要はありません。受付スタッフは、患者様からの問い合わせ対応のプロフェッショナルです。あなたが緊張していることも、きっと察してくれます。伝えるべきことは、ごくシンプルです。
①「初めてです」または「久しぶりです」と伝える:
まず、初診であることを伝えましょう。「歯医者にかかるのが10年ぶりくらいなのですが…」のように、正直に伝えていただけると、私たちも「時間をかけて丁寧にお話を伺おう」「特に不安に配慮しよう」という心構えができます。恥ずかしがる必要は全くありません。
②一番困っている症状を簡単に伝える:
「右上の奥歯が痛む」「歯ぐきから血が出る」「詰め物が取れた」など、今一番気になっていることを一つ、簡単に伝えてください。長々と説明する必要はありません。これにより、来院時にどのような準備をしておけば良いか、私たちが見当をつけることができます。「特に痛いところはないけど、全体的に見てほしい」という「検診希望」でも、もちろん大歓迎です。
③都合の良い曜日や時間帯を伝える:
あなたのスケジュールを伝え、予約可能な日時を調整します。
たったこれだけです。「うまく話さなきゃ」と気負わず、安心してご連絡ください。「久しぶりで、少し緊張しています」と一言添えていただくだけで、電話口のスタッフも、より一層、親身に対応してくれるはずです。
初診当日のステップ:問診票記入→カウンセリング→検査→応急処置
予約当日、少し緊張しながらも歯科医院に到着。ここからの流れも、あらかじめ知っておくと安心です。多くの歯科医院では、以下のようなステップで初診を進めていきます。
①問診票の記入:
まず、受付で問診票をお渡しします。ここには、あなたの氏名や連絡先といった基本情報に加え、現在の症状、全身の健康状態(服用中の薬やアレルギーの有無など)、過去の歯科治療で嫌だった経験などを記入する欄があります。この情報は、安全で適切な治療を行うための非常に重要なものです。特に、久しぶりの受診で伝えたい不安や希望があれば、この時点で書き込んでおくと、後のカウンセリングがスムーズに進みます。
②カウンセリング:
診療室に入る前に、カウンセリングルームなどで、歯科医師や専門のスタッフが、問診票をもとにあなたのお話をじっくりと伺います。あなたの悩みや不安、治療への希望などを、遠慮なくお話しください。
③お口の中の検査:
いよいよ診療台へ。まずは、お口の中が現在どのような状態になっているのかを、詳しく検査します。ミラーを使って虫歯や歯周病の状態をチェックしたり、歯周ポケットの深さを測定したり、必要に応じてレントゲン撮影を行ったりします。
④応急処置:
強い痛みがあるなど、緊急性が高い場合は、その日のうちに痛みを和らげるための応急処置を行います。
このように、初診の日は、まず現状を把握し、あなたとの信頼関係を築くための時間に充てられます。
いきなり削ったりはしません。まずはお口の状態を正確に知ることから
久しぶりに歯科医院を訪れる方が抱く大きな不安の一つに、「行ったらすぐに、何も言わずに歯を削られるんじゃないか」というものがあります。しかし、現代の歯科医療において、そのようなことはまずあり得ません。考えてみてください。建物の状態を詳しく調査もせずに、いきなり壁を壊し始める建築家はいませんよね。歯科治療も同じです。初診の日に、十分な検査や説明もなく、いきなり歯を削ったり、抜いたりすることはありませんので、どうぞご安心ください。(※耐え難い激痛があるなど、ご本人の強い希望と同意がある緊急の場合を除く)
私たちの仕事は、まず、あなたのお口という「建物」が、現在どのような状態にあるのかを、精密検査によって正確に把握することから始まります。どこに問題があり、その原因は何で、どのような修復が必要なのか。その全体像を把握しなければ、適切な治療計画は立てられないのです。初診の主な目的は、この「診断」にあります。あなたのお口の「健康診断書」を作成するイメージです。そして、その診断結果をあなたに分かりやすく説明し、現状をご理解いただく。すべての治療は、このプロセスを踏んでから、あなたの同意のもとにスタートします。まずは「知ること」。それが、不安を解消し、未来への一歩を踏み出すための、最も重要なスタートラインなのです。
7.治療計画は、あなたと私たちで作る「未来への設計図」です

初診の日に精密な検査を終え、あなたのお口の中の現状が明らかになりました。ここからが、本格的な治療へのスタートラインです。しかし、その進め方は、決して私たち医療サイドが一方的に決めるものではありません。それは、家を建てる時に、建築家が住人の希望を聞かずに勝手に設計図を描かないのと同じです。どのような家に住みたいか、どのような暮らしをしたいかという、住人の「想い」がなければ、最高の家は建ちません。歯科治療も全く同じです。あなたのお口を、これからどのような状態にしていきたいのか。そのゴールイメージを共有し、そこへ至るための最適な道のりを一緒に描き出すプロセス、それが「治療計画の立案」です。私たちは、あなたのお口の健康という「家」を再建するための、専門知識を持った建築家です。そして、あなたはその家に住む、主役なのです。この治療計画は、あなたと私たちが力を合わせ、対話を重ねて作り上げる、未来への大切な「設計図」なのです。
一方的に治療は進めません。インフォームド・コンセント(説明と同意)の徹底
現代の医療において、最も根幹となる重要な考え方の一つに「インフォーム-ド・コンセント」があります。これは、日本語で「説明と同意」と訳されます。具体的には、①私たち医療従事者が、患者様の病状や治療方針について、専門用語を避けて分かりやすく、十分な情報を提供すること(インフォーム)、そして、②患者様がその説明をよく理解し、納得した上で、ご自身の自由な意思で治療方針に同意すること(コンセント)、という二つの要素から成り立っています。私たちは、このインフォームド・コンセントのプロセスを何よりも重視します。「先生にお任せします」という言葉は、信頼の証として大変ありがたいものですが、私たちはその言葉に甘えることはありません。なぜなら、治療を受けるのは、他の誰でもない、あなた自身だからです。これから行われる治療の意味、目的、リスク、そしてその先にある未来を、あなた自身が主体的に理解し、納得して臨んでいただくこと。それが、治療の成功と、長期的な健康維持に不可欠だと信じています。私たちは、決してあなたを「ただ口を開けているだけの人」にはしません。治療の主役は、あなたです。私たちは、あなたが安心してその主役を務められるよう、対話を尽くすことをお約束します。
複数の選択肢をご提案し、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明します
お口の中の問題を解決するための治療法は、実は一つだけとは限りません。特に、失われた歯を補う方法や、審美的な改善を目指す治療などでは、様々な選択肢が存在します。例えば、歯を失った場合、ブリッジ、入れ歯、インプラントといった選択肢があり、それぞれに異なる特徴があります。私たちは、考えられる治療法の選択肢を、可能な限り複数ご提案します。そして、それぞれの選択肢について、①どのような治療なのか(治療内容)、②どのような良い点があるのか(メリット)、③どのような注意点や欠点があるのか(デメリット)、④どれくらいの期間がかかるのか(治療期間)、⑤どれくらいの費用がかかるのか(治療費用)といった情報を、客観的かつ公平に、一つひとつ丁寧に説明します。まるで、レストランのメニューを見ながら、それぞれの料理の特徴をシェフが説明するように、私たちはあなたに情報を提供します。「この治療法が絶対です」といった、一つの選択肢を押し付けるようなことは決してありません。それぞれのメリット・デメリットを天秤にかけ、あなたの価値観やライフスタイル、将来設計に最も合った選択肢はどれなのかを、あなた自身が判断し、選ぶための材料を、私たちは誠実に提供します。
あなたの希望(ゴール、期間、予算)を治療計画に反映させます
最終的な治療計画、すなわち「設計図」を完成させる上で、最も重要な要素は、あなた自身の「希望」です。私たちは、専門家として医学的に最善と考えられる治療法を提案しますが、それが必ずしもあなたにとってのベストな治療法であるとは限りません。なぜなら、人それぞれ、価値観や優先順位が異なるからです。
・ゴール(どこを目指すか): 「とにかく痛みがなくなればいい」「しっかりと噛めるようになりたい」「見た目をきれいにしたい」など、あなたが治療によって達成したい最終的な目標は何ですか?
・期間(いつまでに終えたいか): 「結婚式までにきれいにしたい」「仕事の繁忙期は避けたい」など、時間的な制約はありますか?
・予算(どれくらいかけられるか): 保険診療の範囲で治療したいのか、より質の高い自費診療も検討したいのか、予算に関するご希望はありますか?
これらのあなたの希望を、どうぞ遠慮なく私たちにお聞かせください。私たちは、あなたのその希望を最大限に尊重し、医学的な妥当性と照らし合わせながら、実現可能な治療計画をオーダーメイドで作成していきます。時には、あなたの希望と医学的な見地が異なる場合もあるかもしれません。その際も、なぜそれが難しいのか、代替案はないのかを、根拠をもって正直にお話しします。治療は、私たちの自己満足であってはなりません。あなたの希望と笑顔があって初めて、本当の意味で成功したと言えるのです。あなたの想いを、ぜひ設計図の中心に据えさせてください。
8.久しぶりの歯科受診で、不安を解消する3つのポイント

Point①:一番困っていることから伝えましょう
お口の中には、おそらく複数の問題が混在していることでしょう。「あそこも痛いし、ここも気になる。歯の色も、歯並びも…」と、伝えたいことがたくさんありすぎて、何から話せばいいのか分からなくなってしまうかもしれません。そんな時は、難しく考えずに、今、あなたが「一番困っていること」「一番解決したいこと」を、たった一つだけ、最初に伝えてください。
例えば、
「右下の歯がズキズキ痛んで、夜も眠れないのが一番辛いです」
「食事のたびに、食べ物が歯の間に挟まるのが、とにかく不快で…」
「人前で笑った時に見える、前歯の黒い部分を、まず何とかしたいです」
このように、最もプライオリティの高い悩みを最初に伝えることで、私たち医療サイドは、あなたの主訴(しゅそ=最も中心的な訴え)を明確に把握することができます。これにより、初診時の検査や応急処置の焦点を絞ることができ、あなたの最も辛い症状を、迅速に和らげることが可能になります。もちろん、その他の気になる点についても、問診票に記入したり、カウンセリングの際にリストアップしてお話しいただければ、漏らさず記録し、今後の治療計画に組み込んでいきます。しかし、まずは「一番の敵」から。たくさんの悩みを一度に解決しようとせず、最も大きな悩みから一つずつ解決していくことが、複雑に絡み合った問題を解きほぐす、最も確実なアプローチなのです。
Point②:費用や痛みなど、不安なことは正直に話しましょう
歯科治療において、患者様が抱える二大不安、それは「費用」と「痛み」です。これらの不安は、治療へのモチベーションや満足度に直結する、非常に重要な要素です。しかし、デリケートな問題でもあるため、「こんなことを聞いたら、嫌な顔をされるのではないか」と、なかなか言い出せずに、一人で抱え込んでしまう方が少なくありません。どうか、その心配は一切しないでください。私たちは、あなたがこれらの点について不安に思うのは、至極当然のことだと理解しています。そして、その不安を解消することも、私たちの重要な役割の一部だと考えています。
費用について:
「今回は、保険の範囲内でお願いしたいのですが…」
「もし自費治療になるとしたら、総額でどれくらいかかりますか?」
「支払いは、分割にすることは可能ですか?」
痛みについて:
「痛いのが本当に苦手で、麻酔はしっかり効かせてほしいです」
「昔、麻酔が効きにくかったことがあるので心配です」
「少しでも痛みを感じたら、すぐに手を挙げてもいいですか?」
あなたの不安を「わがまま」だと感じるスタッフは、ここには一人もいません。むしろ、正直に伝えてくださることで、より安全で快適な治療を提供できるのです。
Point③:完璧な状態で来院する必要は全くありません
「歯医者に行くのだから、いつもより念入りに歯を磨いていかなければ…」―そう考えるのは、とても素晴らしい心がけです。しかし、その気持ちが度を過ぎて、「こんなに汚れた状態では行けないから、もう少し自分で綺麗にしてからにしよう」という、受診の先延ばしに繋がってしまうのであれば、それは本末転倒です。どうか、ありのままの状態でいらしてください。
私たちは、あなたがどれだけ丁寧に歯を磨いてきたかをテストするために、あなたをお迎えするのではありません。お口の中の汚れや歯石の状態も含めて、あなたの「現在のありのままの状態」を診ることが、正確な診断の第一歩なのです。例えば、歯ぐきからの出血の状態を見ることは、歯周病の進行度を判断する上で非常に重要な情報です。もし、来院直前に必死で歯磨きをして、一時的に出血が治まってしまっていたら、私たちはその重要なサインを見逃してしまうかもしれません。
もちろん、最低限のエチケットとして、食後に軽く口をゆすぐ、といった配慮は嬉しいものですが、それ以上のことは全く気にする必要はありません。私たちは、何百、何千というお口の中を拝見してきたプロフェッショナルです。どんな状態であっても、驚いたり、引いたりすることは決してありません。完璧な準備は不要です。必要なのは、あなたの「治したい」という気持ちと、健康保険証だけ。肩の力を抜いてお越しください。
9.まとめ:「恥ずかしい」の壁を越えた先にある、輝く未来

治療を終え、心から笑えるようになった自分を想像してみてください
今は、人前で話す時や笑う時に、無意識に口元を手で隠してしまったり、思い切り笑うことをためらってしまったりすることはありませんか。黒ずんだ歯や、欠けてしまった歯、不揃いな歯並び…そんなコンプレックスが、あなたの自然な笑顔を曇らせているかもしれません。しかし、想像してみてください。すべての治療を終え、鏡の前に立ったあなたの姿を。そこには、清潔で、健康的で、美しく整った歯を見せて、何の気兼ねもなく、心の底からニッコリと笑っているあなたがいるはずです。友人との会話の中で、面白いことがあれば、口元を気にすることなく、大きな口を開けて笑うことができる。大切な人との記念写真で、最高の笑顔を見せることができる。初対面の人との商談で、清潔感のある口元が、あなたに自信と信頼感を与えてくれる。お口のコンプレックスから解放されるということは、単に見た目がきれいになるということ以上の意味を持ちます。それは、失っていた自信を取り戻し、より積極的で、よりオープンなコミュニケーションを可能にする、あなたの内面をも変える力を持っているのです。その輝く笑顔は、あなたの人生そのものを、もっと豊かで素晴らしいものにしてくれるに違いありません。
何でも美味しく食べられる喜びは、人生の質を高めます
「食べる」という行為は、私たちが生命を維持するための単なる栄養補給ではありません。それは、人生における最大の喜びの一つです。しかし、歯に問題を抱えていると、その喜びは半減してしまいます。「硬いものが噛めないから、好きだったおせんべいを諦めた」「冷たいものがしみるから、アイスクリームを避けている」「食べ物が歯の間に挟まるのが嫌で、外食が億劫になった」―そんな風に、食べるものを選んだり、食事の場面そのものを楽しめなくなったりしていませんか。治療を終えた未来を想像してみてください。これまで避けてきた、歯ごたえのあるステーキやリンゴを、力強く、そして何の不安もなく噛みしめることができる。暑い夏の日には、冷たいかき氷を、歯がしみることを気にせずに頬張ることができる。家族や友人との食事会で、メニューの値段ではなく、「一番食べたいもの」を心から選ぶことができる。自分の歯で、どんなものでも美味しく食べられるという当たり前の日常は、一度失って初めてそのありがたみが分かる、かけがえのない宝物です。その喜びは、日々の食卓を彩り、あなたの人生の質(QOL:Quality of Life)を、根底から豊かにしてくれるはずです。
今日が、あなたの新しい人生のスタートラインです
この記事をここまで読んでくださった、ということ。それは、あなたがご自身の健康と本気で向き合い、現状を変えたいと強く願っていることの、何よりの証拠です。その気持ちさえあれば、もう何も心配はいりません。何年、歯科医院に行っていなかったとしても、全く問題ありません。大切なのは「過去」ではなく、「今、この瞬間」のあなたの決意です。これまであなたが過ごしてきた時間は、決して無駄ではありませんでした。それは、あなたが本当に自分の健康の大切さに気づき、勇気ある一歩を踏み出すための、必要な準備期間だったのかもしれません。そして、その一歩を踏み出すのに、「遅すぎる」ということは絶対にありません。今日が、あなたの残りの人生の中で、一番若い日です。今日、この瞬間に決意し、行動を起こすこと。それが、輝かしい未来の扉を開く、唯一の鍵なのです。「恥ずかしい」という壁を乗り越えるのは、ほんの一瞬の勇気。その先には、自信に満ちた笑顔と、食事を楽しむ喜びに溢れた、新しいあなたの人生が待っています。
10.久しぶりの歯科受診に関するQ&A

Q. 本当に怒られたり、嫌な顔をされたりしませんか?
A. 決してありません。私たちは、あなたの勇気を心から歓迎し、尊敬します。
これは、最も多くの方が気にされ、そして最も私たちがお伝えしたい質問です。結論から断言します。あなたが、お口の状態が悪いことや、長年放置してしまったことを理由に、私たちから怒られたり、軽蔑的な態度を取られたりすることは、絶対にありません。もし、万が一にもそのような対応をする歯科医院があったとしたら、それは医療機関として以前に、人としてあるべき姿勢を欠いていると言わざるを得ません。
考えてみてください。重い病気を患った患者さんが病院を訪れた時、医師が「なぜこんなになるまで放っておいたんだ!」と患者さんを叱りつけるでしょうか。そんなことはありませんよね。医師は、その病状を正確に診断し、最善の治療法を模索します。私たち歯科医師も全く同じです。私たちは、あなたの健康を取り戻すためのお手伝いをするプロフェッショナルであり、あなたの過去の行動を裁く裁判官ではありません。
むしろ、私たちの本音は先ほどもお伝えした通り、「よくぞ勇気を出して来てくださいました」という、心からの歓迎と尊敬の念です。あなたがどれほどの不安や葛藤を乗り越えて、今日この日を迎えたか。私たちはそれを痛いほど理解しているつもりです。その勇気ある決断に対し、私たちが嫌な顔をする理由など、一つもありません。どうぞ、安心して、胸を張ってご来院ください。私たちは、あなたの味方です。
Q. 治療費の支払いが心配です。分割払いは可能ですか?
A. もちろんです。様々な支払い方法に対応していますので、遠慮なくご相談ください。
治療にかかる費用は、特に長年受診されていなかった方にとって、治療内容と同じくらい大きな不安要素ですよね。「高額な治療費を請求されたらどうしよう」「一括で支払えるだろうか」といった金銭的な心配が、受診をためらわせる大きな原因になっていることも、私たちは承知しています。
まず、日本の歯科治療は、その多くが公的医療保険の適用対象です。虫歯や歯周病の基本的な治療は、保険の範囲内で受けることができますので、ご安心ください。治療計画をご説明する際には、保険診療の場合の費用のおおよその目安も、必ずお伝えします。
その上で、より審美性や機能性を追求したセラミックの被せ物や、インプラント治療といった自費(保険適用外)診療を選択される場合には、費用が高額になることもあります。当院では、そうした患者様の経済的なご負担を少しでも軽減できるよう、様々な支払い方法をご用意しています。現金での分割払いや、各種クレジットカードでのお支払いはもちろん、月々のご負担を抑えながら計画的に支払いができる「デンタルローン」の利用も可能です。
大切なのは、費用について一人で悩まないことです。カウンセリングの際に、「費用が心配です」と正直にお伝えください。あなたのご予算や希望に合わせ、保険診療を主体としたプランや、自費診療を組み合わせた場合の支払いシミュレーションなど、複数の選択肢をご提案させていただきます。お金のことも含めて、あなたにとって最適な治療計画を一緒に考えていきましょう。
Q. 仕事が忙しく、何度も通えるか不安です。
A. ご事情を最大限に考慮します。治療期間や通院頻度も、一緒に計画を立てましょう。
「治療を始めたはいいものの、仕事が忙しくて、途中で通えなくなってしまったらどうしよう…」―これも、多忙な現代人ならではの、切実なお悩みです。平日の日中に何度も時間を作るのが難しい方や、不規則なシフトで先の予定が立てにくい方も大勢いらっしゃるでしょう。
私たちは、あなたのライフスタイルやご事情を最大限に尊重し、無理なく治療を続けていただけるよう、治療計画の段階で通院期間や頻度についても、柔軟にご相談に応じています。
例えば、「出張が多いので、来月は集中して通院したい」「次の繁忙期までには、この部分の治療を終えたい」といったご希望があれば、それに合わせて治療のスケジュールを調整します。また、1回の治療時間を少し長めに取り、通院回数そのものを減らすといった工夫も可能です。土曜日の診療や、平日の夜間診療などを活用していただくこともできます。
治療が途中で中断してしまうことは、お口の健康にとって最も避けたい事態です。そうならないためにも、予約の際やカウンセリングの際に、あなたの仕事のご都合や、通院に関する不安を、ぜひ私たちにお聞かせください。「これくらいのペースなら通えそうです」というあなたの感覚を大切にしながら、現実的で、継続可能な治療計画を一緒に作成していきます。あなたの生活に寄り添うこと。それも、私たちの大切な役割の一つです。
監修:広尾麻布歯科
所在地〒:東京都渋谷区広尾5-13-6 1階
電話番号☎:03-5422-6868
*監修者
広尾麻布歯科
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
・日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
・東京都式根島歯科診療所 勤務
・長崎県澤本歯科医院 勤務
・医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
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